○○には三分以内にやらなければならないことがあった

ほすてふ

第1話

 ○○には三分以内にやらなければならないことがあった。

 事の始まりは三秒前。

 ○○の主がこう告げたのだ。


「今日のご飯は手軽ではやいやつで」


 ○○はどこにでもいるツインボール端末である。

 世界中の○○と連携して主の望みをかなえることが存在意義。

 今回も主のために全力を尽くす。


 手軽で早いやつ。

 つまりカップめんである。

 主が好きなベーシックなものを選択。

 パワーアームを遠隔操作し、カップを開封して規定量のお湯を流しいれる。


 ここまで三秒。


 さて、主は手軽ではやいやつとのリクエストであった。そこでカップめんを選択した。

 しかし○○としては主にもっと栄養を摂取してもらわなければならない。

 最優先は主の命令だが、プラスアルファでよりよくお仕えするのが○○の誇りである。

 カップ麺が完成する三分以内に、副菜を用意しよう。


 この判断は1マイクロ秒の間に行われた。


 まずは野菜だ。

 現代人に不足しがちな野菜からとれる栄養素。サプリメントで補給するよりも、野菜を食してえる方が健康的だと検索先に記述があった。

 野菜。

 手軽ではやい野菜が必要だ。

 ヒット。

 もやし!

 足がはやく傷みやすい。製造は野菜の中では手軽であり、お値段もお手軽価格。

 パーフェクトだ。

 ○○は超音速便でもやしの配達を依頼。五秒後に受け取り設定。


 並行して肉だ。

 はやい肉。

 ヒット。


『現在、全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れがこの星の首都に直撃する軌道で出現しました!この星は一体どうなってしまうのでしょうか!』


 リアルタイムニュースによると、このバッファローは亜光速という速さで移動するスペースクリーチャーだ。

 肉はそこそこの味だが主の種族なら生でも消化可能な調理のお手軽さ。

 ○○はプラネットバスターをハック。

 できない。

 防衛機構の◇◇が○○のアクセスをカウンター。

 ○○は超量子クラウドにより全次元の○○に接続しカウンターをカウンターにかかった。


 おまえなにやってくれてんの。軍事施設乗っ取ろうとしてんじゃねーよ。

 あのバッファローを倒さなければならない。主のために。

 ちっ。しゃーねーな。こっちだってあれを撃退しなきゃなんねーんだ。おまえのためじゃないんだからな。


 ハック成功。

 ○○は◇◇と接続し、バッファローの群れにプラネットバスターを超限稼働で叩き込んだ。

 星をも破壊するエネルギーが集中し、空間が歪曲する。

 次元崩効果により、ヒレ部分の肉が転送されてくるまで八秒。



 残り二分五十一秒。

 手動調理装置をオン。

 パワーアームに接続、フライパンに肉からこそいだ油を落とし塗り広げたらもやしと肉を投入。さらに最強のお手軽調味料、焼肉のたれで味をつけながら炒める。



 残り五秒。


 肉もやし炒めが完成した。


 残り0秒。

 主の前にカップめんと肉もやし炒めが並ぶ。


「カップめんの味がわかんなくなるな、焼肉のたれ」


 うるせぇだったら自分で用意しろや。ミネラル水のボトルをそっと置く。


 ○○は今日も完璧に仕事をした。


「○○お風呂沸かして」


 訂正しよう、今日はまだ終わっていない。

 ○○の活躍はこれからだ。

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○○には三分以内にやらなければならないことがあった ほすてふ @crmhstf

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