シャムへ

マカオで働いているある日、ワンから呼ばれた

今度シャムのアヨータヤーまで交易船を出すため、我々にも手伝ってほしいとのことであった

今回はワンのルイコスタ商会での働きが認められ、ワンが船長として交易船を率いるらしい


…しかし、シャムの言葉など喋れるのか?


なんと、ワンは明国語、ヒノモト語(ジパング語)とポルトガル語に加えシャム語まである程度喋れる語学に堪能な男であった

ちなみに、ヤスケもヒノモトに来る前にはマカオや杭州をはじめとした明国にいたこともあり、ポルトガル語とヒノモト語に加え明国語も喋れたりする


もちろんわしはヒノモト語しか喋れんが、タキガワ家の家業といってもいい火縄銃の扱いや忍び働きに加え、クキの叔父貴から水軍としての航海の技も多少教えてもらってはいるので、多少の操船はできる

このためワン殿にも重宝がられて、泉州などへの航海も手伝ったりしていた

あとは人様に誇れるほどではないが、多少医術の心得もある


ノブナガ様はヒノモト語しか喋らないはずだが、この短期間で明国語やポルトガル語をある程度理解しているからやはり只者ではない


準備を終え、シャムへ向けて出航の日が来た

今回乗る船はキャラックと並ぶポルトガルを代表する船であるナオだ

ナオとはポルトガル語で船を指し、船の代名詞でもある

ナオは二本マストのことが多いが、ナオを大型化して三本マストにした発展型がキャラックだとイメージしていただくのがわかりやすいだろう


どちらも大航海時代を代表する船で、ヒノモトの種子島に1543年に鉄砲を伝えたポルトガル船がキャラックであったのは有名な話である


マカオを出て南へ

越南、交阯を超えチャオプラヤ川の河口のトンブリーに到着し、そこからチャオプラヤ川を遡りアヨータヤーを目指す

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