究極の選択

こむぎこちゃん

第1話

 私には三分以内にやらなければならないことがあった。

 赤か緑か。究極の選択である。

 目の前に並んだ2色に、私は頭を悩ませる。

 その間も目の前のタイマーは確実に時を刻み続け、タイムリミットが刻一刻と近づいていることを示す。

 心臓が、早鐘を打つ。

 私はどちらを選ぶべきだろう。

 ここにいるのは私だけではない。他にももう一人、幼なじみの朔もいるのだ。選択の失敗は許されない。

 こんな状況に陥ったのはなぜか。

 ――すべての始まりは、両親が旅行で二日間家を空けていることである。

 私は今までに入ったことのない店に足を踏み入れ、そこで朔と偶然出くわし……気づけば、こんな状況になっていた。

「早く選べよ、そんくらい」

 朔が、いらだちを含んだ声を上げる。

「そんなに時間がかかるなら、俺が――」

「いい! ……自分で、決める」

 そうは言っても、これという決め手がない。

 朔とは違って、私はこれが初めてなのだ。決断に時間がかかるのは許してほしい。


 赤か。


 緑か。


 タイムリミットはもう、すぐそこまで迫ってきている。


 あと10秒。


 あと3秒、2秒、1秒――


「こっちだーっ!」


 私は意を決して……緑のた〇きの蓋を開けた。

 ふわりとだしの香りが鼻をくすぐり、私はゴクリと喉を鳴らす。

「い、いただきますっ!」

 勢いよくそばをすする私を見て、朔があきれたようにため息をついた。

「……お前、いちいち大げさなんだよな。そんなに悩む必要あるか?」

「ふぁっふぇ……だって、どっちも食べたことないんだもん!」

 ハフハフしながら食べていた私は、ゴクンと飲み込んで反論した。

「すごい、めっちゃおいしい!」

「そりゃよかったな」

 緑のた○きより2分長い、赤いき〇ねができるのを待っている朔が、そう言って小さく笑う。

「ありがと、朔。初めてのコンビニで不安だったんだ。一緒に買い物してくれるだけじゃなく、家まで来て食べ方まで教えてくれて助かったよ」

「……別に」

 照れたような朔を見て、私はふふっと笑った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

究極の選択 こむぎこちゃん @flower79

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ