Side A

 ミコには三分以内にやらなければいけないことがあった。


 だから、

 足元に寄ってきたに気を配ることができなかった。



 ***



 締め切りまであと三分。

 この三分に物語を打ち込んで推敲して、アップして。


 間に合うだろうか。


 否、間に合わせるのだ。

 やるしかない。


 そうだ。


 この時のためストックしておいた掌編があったではないか。


 データは何処に保存したのだっけ。


 そのデータを基に少し改変して

 それで、今回は何とかなるのではなかろうか。


 未発表データだ。


 ふと、思いついたものを書き留めておいた散文だ。

 今使わなくては日の目を見ないぞ。

 と、

 イイワケ苦しく、データを探す。


 あと二分。


 先方の要望に答えるために、

 この分を追加して

 ここは削って。


 いけるだろうか。


 文字数。

 改行。

 誤字脱字。


 てにをは は、これでよいだろうか。


 あと30秒。


 あぁ! もう。


 原稿落とす恐怖が迫る。

 それは避けたい。

 時間は無常。

 刻一国と迫りくる、それ。



 えい!


 間に合ったか?


 ギリギリ?


 ……。



 ふう。


 セーフ?


 一息ついたら、気が付いた。

 わたしをじっと見ている視線に。

 

 すがるような まなざし。


「にゃあ」


 そのの代わりに、わたしが鳴いてみた。


 わたしの代わりに このが泣かなくてもいいように。











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