戦いの裏で

「全く人を待たせるとはどういう神経だ」


 メルフィーアは髪色と同じ色のジャケットに

 グレーのスラックス系のズボン姿で人を

 待っていた。

 流石にこないだ世話になってしまった以上は、

 飯の一食でも奢らないと駄目だろうと

 思っていた。

 この事をおじ様に相談したところ、

 喧嘩になりかけたが、

3人目がいるという事で鎮火された。


「おやおや、少し待たせたみたいで」


「すみません~!ごちそうになります」


「これは弟のアラト。アラトの分も申し訳無い」


 カミトは弟のアラトを連れて姿を現した。

 そして、メルフィーアにアラトを紹介した。


「どうも、ごちそうになります」


「そして、さえずりさんは服の隙間に

 隠れてもらっているので大丈夫ですよ」


「行くぞー」


 メルフィーアを先頭に3人は駆け出した。




 ジュワーッ!

 ジュジュジュジュワァァァァァ


 肉の焼ける音が響く。


「勇者様~♪さっきからちょっと不機嫌そうな

 顔されているんですけどどうしたんですか?」


 皿の上に乗せられた肉を摘みながら、

 梟はメルフィーアに尋ねた。


「・・・・実は昨日の夕方のことだ。

 実戦訓練をしていたら晴れて

 壊した練習人形の数が全部で千体超えたんだ」


 メルフィーアは暗い顔で続けた。


「んでだ、おじ様にめちゃくちゃ怒られて

 人形の改造が完了する3日間は

 実践禁止と言われて・・・・」


 カミトとアラトの顔が引き攣った。


「まぁ、気にするな。礼をする時間が

 取れたんだ。前向きに考えよう」


 メルフィーアは続けた。


「あらら、それは大変でしたね、勇者様。

 もう十五年くらい早く生まれていれば

 おそらく英雄になれたのに」


 さえずりは優しく囁いた。


「ありがとう。さえずりさん、

 そこは気にしてないよ。

 ただ、自己鍛錬の匙加減がわからないんだ」


「うーん、そこはそうねぇ。

 よく動き、よく学び、よく遊び、よく食べて、

 よく休むって感じかしら。昔の人の言葉けど」


「どういうことだろうか?」


 メルフィーアは思ったことを口にした。



「纏めると生命を削る様な無茶なことを

 するなってことね。

 そう言えばこないだ、倒れたって聞いたけど

 何をしたの?」


「アレ?アレは・・・・・・・ハハハハハハハ」


 メルフィーアは気まずそうに笑った。


「メルフィーアさん、ジェネシスって言う人がめちゃくちゃ心配してましたよ」


 カミトは横から釘を刺した。


「あのときはそもそも自己鍛錬で人形を150体程壊した次の日でさ」


 メルフィーアは苦笑しながら返した。


「ちょっと待ってください。どういう自己鍛錬をしているんですか?」


「そりゃ、白兵戦で一騎当千いつでもできるようにだな」


メルフィーアは笑いながら説明した。


「確かに大戦中ならまだしも、

 大戦が終わって十数年しか経ってません。

 だからその必要性はないとオレは思います」


 カミトは冷静に返した。


「まぁ、少なくとも

 オレと兄さんと言う例外はいるけど。

 余分な戦力は争いの元だよね、さえずりさん~」


 焼けた数枚の肉を頬張りながら黒髪の少年は言った。


「でも、やっぱりいつぞやの襲撃みたいなことは

 確かにあってもおかしくはない。

 その気持ちは理解してあげて」


「・・・・さえずりさん」



 メルフィーアはさえずりを見つめた。


 カミトは冷静に言葉を紡いだ。


「確かにさえずりさんの言う通りですね。

 大戦直後に退役された人達も銃を握ったって

 言いますから気持ちはわかりますよ」



 さえずりは優しく言い放った。


「で・も!無茶は駄目!勇者様、勇者様は一人しかいないんだから」


「さえずりさん、無理はしない。

 まぁ、あの時は消耗し過ぎたんだ。

 一気に使ったから」


 メルフィーアは焼けた肉を大量に皿に取り

 そして肉を焼き始めた。


「体力をつけるためにガンガン食うぞ~~!!」


「追加、頼んでいいですか?」


「あぁ、好きなだけ頼むといい」


「やっほー!!兄さんももっと頼みな」


「ではハンバーグとウィンナー、

 ミノをいただこうかしら」


 楽しそうに肉を焼いて食べている

 メルフィーアたちの横でカミトは思った。


 ーーーー何を一気に使ったんだ?


 カミトは冷静に我に返り、改めて思った。



 ーーーーそもそも、あのクリムゾンドラゴンの動力源は一体何なんだ?


 ただ、疑問がひたすら頭に過る。


 ーーーーあの剣は何なんだ?

    隕石から出てきたとか言っていたな。

    そして彼女は一体何者なんだろうか?


 カミトはスッキリはしないものの、

 それを言ったら自分たちのことも聞かれるだろう。


 と考え、疑問を焼けた肉と共に押し込んだ。


「すみません。オレはタレ付きチーズカルビで」


「あっ!!!オレも!!オレも!!」


「もう~。アラト、どんだけ食べざかりなのよ」


「違いますよ。オレはお肉食べたい盛りですぅ」


 アラトはさえずりのツッコミに目を光らせて応えた。

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戦え!クリムゾンドラゴン!! @syu-inononn

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