Aパート

 私たち、捜査1課第3班は爆弾事件の捜査をしていた。犯人は大胆にも、ある会社のビルに時限爆弾を仕掛けたと予告状を送ってきた。それには資料も添付されており、爆弾の外形、仕掛けた場所と爆発する時間も記されていた。私たちはすぐに現場に急行し、ビルの中の人たちを避難させて爆弾を探した。すると記されていた場所にあったのだ。そして爆弾処理班による時限爆弾の解除作業が行われた。しかし・・・。

 その起爆装置がどうしても解除できなかったのだ。そうしているうちに爆発する時間が近づいた。倉田班長が捜査員や爆弾処理班に指示した。


「もうだめだ。時間切れだ。ここを出るぞ! 急げ!」


 皆があきらめてそのビルから退去した。すると時間通りに爆弾が「ドカン!」と爆発した。幸いなことに被害は少なかった。その階の窓ガラスが割れたが、それ以上の被害は出なかった。爆薬が少なかったからかもしれない。


 そんな事件が連続して3件起こった。我々はどうすることもできず、ただ歯ぎしりするしかなかった。起爆装置を解除できない以上、爆弾は犯人の思い通りに爆発する。捜査会議では倉田班長が発言した。


「爆弾自体は大した破壊力を持っていない。これは愉快犯だと思われます。犯人は我々を見てほくそ笑んでいるに違いありません」


 だが課長の荒木警部は違う見方をしていた。


「いや、そうとばかりは言えないかもしれんぞ。もしかしたらこれら一連の事件は大きなことをする予行演習の可能性がある」

「予行演習ですか?」


 倉田班長が聞き直した。


「そうだ。この起爆装置を使ってもっと多量の爆薬を爆発させたらどうなる? その被害は計り知れんぞ。しかもそれを見つけたところで解除できないのだから」

「ということはこれが大掛かりなテロに使われると?」

「そう考えて捜査する必要がある。過去の類似の事件、事件現場付近にいた不審者。爆弾を作れる人物。テロ組織の関係者。爆弾が仕掛けられた会社に関係があった人物。とにかく関係がありそうなところを徹底的に洗え!」


 荒木警部は捜査員にそう指示した。


 我々は会社やテロ組織の資料、過去の事件資料などを調べ、昼夜を問わず、しらみつぶしに聞き込みを行い、捜査を続けた。そこで捜査線上に一人の人物が上がった。それが山田学だった。

 彼は電子機器の会社の技師だった。1年前から休みの日にもほとんど外に出かけず、家の中に閉じこもるようになった。近所の人の話では中で何かを作っているとのことだった。そしてたまに外出することがあるが、それはフィギュアの集まりの会だった。彼はそこで自作のフィギュアを披露していた。そこにテロの関係者もいたことが分かった。


「職場での評判は上々です。普段、誰に対しても優しいそうです。ただ正義感が強く、間違ったことには上司でも食って掛かるそうですが・・・」


 それが捜査会議で出た、山田の人物評だった。そんな彼がどうして起爆装置を作ってテロを行うのか・・・私にはわからなかった。


「任意で事情聴取しましょうか?」


 捜査員の一人が提案したが、倉田班長は首を横に振った。


「まだ確証はない。下手に動いてこちらの動きをつかまれるかもしれない。犯人は奴一人ではないようだ。共犯がいる。そいつらが尻尾を出すまでは手を出さない方がいいだろう」


 それで山田を泳がすことにした。我々がマークしながら・・・。


 その矢先、山田に動きが見えた。会社を欠勤して外出したのだ。我々は彼の後を追った。すると港に向かって「ひまわり号」という客船に乗ったのだ。それは九州行で、五百人近い人が乗っている。我々もその船に乗り込んだ。だが彼の目的がわからない。ただの旅行とは思えないが・・・。

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