ヒーロー

広之新

プロローグ

 私には三分以内にやらなければならないことがあった。それは目の前の時限爆弾を解除することだ。もし失敗したら多くの人がこの客船もろとも海に沈んでしまうだろう。


 ここは最下層にある船倉の小部屋だ。時限爆弾以外、何も置かれていない。私の他にはもう一人、拳銃に撃たれた男がいるだけだ。彼は身動きもせず、床に転がっている。この小部屋は外からカギをかけられて逃げることはできない。通信も遮断されている。もし外に出られたとしても、助けを呼んで爆弾を解除してもらう時間はないだろう。私しか対処できる者がいない状況なのだ。


(私に時限爆弾の解除ができるのか・・・)


 そう思いながら床に転がっている男を見た。彼の名は山田学。この時限爆弾の、いやその起爆装置の製作者だ。彼を追って私はこの船に乗り、この船倉に飛び込んだ。この男がすべてのカギを握っていると思って・・・。それは2週間前にさかのぼる。

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