第10話 戦争
「余が来た訳とは、あの隣国、グリストランドが責めるかもしれないという噂が出ているのじゃ」
グリストランドとは、近年力を増している国で、もっも恐れられている国だ。
「なるほど、それで私に力を貸してくれという訳ですね」
「頼む。何しろ、もう時間がない。このままだとあっさりと滅ぼされてしまう。だから頼む」
「すまないが、それは出来ない。もう、戦うことは出来ない」
申し訳なさそうにアルセイドが言う。
「すまないが、他を当たってくれ」
「どうしてもだめなのか? 最強の剣士アルセイドよ」
「それは過去の話だ。今の俺はそんなたいそうな人じゃない」
そしてアルセイドは、その場を去った。
そして数日後、国王の危惧したとおり、グリストランドが攻めてくる。その軍勢によって、この国、ミリシアの軍の味方をどんどんと破っていく。
その勢いはもはや戦いになどなっていなかった。
そして、あっさりと破られ、グリストランドの軍のミリシアへの侵入を許してしまった。
「ニアちゃん」
話しかけられる。もう要件は分かっている。あの件だろう。
町の人達が騒いでいることでわかっている。
この国はもう少しでクリストランドの軍によって支配されるだろう。もちろんそれはこの街も一緒だ。
私は捕まった場合、確実に慰安のための玩具にさせられる。拘束されてるし。
「逃げましょう」
おばちゃんがそう言う言葉に「うん」と頷いた。
「少しいいか」
その声の発された方を見ると、ご主人様がいた。
「なんで……」
「そりゃあ、心配だからな」
「心配って……」
その瞬間、私の体が不自由で覆われたような気持ちがした。
「嫌だ」
「え?」
もうご主人様とはいっしょに居たくない。
「おばさん、お願い」
「お願い……と言われても」
流石に目の前にご主人さまがいる前だと、何もできないか。
そしてそのまま私の身柄はご主人様に渡されてしまった。
「よし、お前は俺が守るからな」
「守るって言うんなら、拘束を外してほしいんですけど」
「それは無理だな」
「やっぱりか……」
そして、屋敷に戻るのかと思ったが、「ちょっと、山に行くぞ」と言われた。
「なんで?」
そう言うと、ご主人様が指をさす。すると、たくさんの兵士たちが向かっているのが見えた。
「屋敷に行くのは危険だからな」
その瞬間、たくさんの兵士たちが向かってきた。それも何十何百の兵士が。その元からは、「クルセイドを殺せ! 奴を殺せばこの国は終わりだ」と叫んでいるのが聴こえた。どうやら、ご主人様は敵にとっても重要な人物らしい。
あれ、これご主人様がいることで、余計ピンチになってる気がする。私のことは気にしないで、「ここは通さない」なんて言ってるよ、あの人。
そして、ご主人様はどんどんと敵を斬りながら、移動する。もう屋敷は見捨てたのか、山の方に山の方へと。
「待って、メイリスは?」
「もう助からん」
「でも!」
あの人がいなかったら私は……。
「分かったよ」
「え?」
「助けに行く」
私のゴネが通じたのだろうか。ご主人様は私を連れて屋敷へと行く。
「大丈夫だ、お前は俺が守る」
本当に意味が分からなくなってきた。急に戻ってきたと思ったら何がしたいのだろうか。私の手足を拘束しときながら、こんなことを言うなんて。
そして私の椅子を引きながら、ご主人様は屋敷の中に入った。
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