第9話 山歩き
私は今日も看板娘として頑張っていたが。
「今日は、休日にしましょう」
と、おばさんが言った。理由を聞くと、いつも頑張っているからだそうだ。別に私はただイスに座って客引きしているだけだけど。
出かける際、相変わらず手足が拘束されている私は車いすに乗った。そしてそれをおばさんに押される。
「今日はどこに行くんですか?」
「ええと、ニナちゃんはあまり外に出たことないでしょ? だから自然を味わわせたいなと思って」
なるほど。確かに私の中の景色は町と屋敷だけだ。山の中とか歩くのもいいかもしれない。本当は自分の足で歩きたいところだけど。
そして山の中に入っていく。すると周りには木々が見える。いい景色だ。私はこんなにも広い自然の中にいる。そう思うと心が少し腫れる気がする。
未だに手足が拘束されていて、全く自由ではないが、その不自由さを半分程度払しょくできる感じがする。
「本当にありがとうございます。こんないいところに連れてきていた台で」
「いえいえ、ニナちゃんのためだもの。これくらい当然よ」
というおばさんの顔は誇らしげだった。
「ねえ、おばさん。私今幸せだよ」
「そう。でも手足が……」
本当に、手足が拘束されていること以外は本当に自由だ。
「うん」
「早く拘束を解かなければね」
「うん!」
今でも幸せだが、出来るならここを自分の足で歩きたいなと少し願ってしまう。
足を少し動かす。登園足は両方ともくっついていて動きそうにない。もし歩けたとしてもやっぱりコケる未来しか見えない。それに手も当然後ろ手で縛られているわけだから手で体を支えることが出来ない。でも、
「おばさん」
「何?」
「ちょっと自分の足動かしたいから、体支えてくれない?」
「えっと……分かったわ」
そうおばさんが言って、私は自分の足で立ち上がる。ふらふらしながらだが、何とか歩く。まるでうさぎ跳びだ。歩けているとは言えないだろう。
だが、こけそうになってもおばさんが支えてくれるので、安心だ。
そしてそのまま歩くこと十五分、ようやく木十個分の距離を進むことができた。
普通の人が楽々出来るようなことをしているだけだが、不思議と達成感がある。
「オはわさん、ありがとうね。支えてくれて」
「いえいえ、こっちこそ可愛い姿を見せてくれてありがとう」
「かわいいって……」
そして私もおばさんの二人で笑った。
「アルセイド様! 来客が」
「……誰だ?」
「それが、国王サンドラク様です」
「……何だと!?」
国王の来週、それは全く予期していないものだった。
確かに政治的な人たちなどが来ることもある。だが、国王自ら来るというのはこれが二回目だ。
何が来るのだろうかと、メイリスを連れて応接室で待機する。
「余が自らここに来たのには理由がある。それは……この国が今窮地に陥ってるからじゃ」
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