第5話 メイドの襲来

 

「おはよう、ニナ」


 隣に寝ているご主人様が私にやさしく話しかけた。

 無視だ。今日は昨日の二の舞にはならない!

 私はそう単純ではないのだ。


「おはようニナ」


 無視無視。


「はあ……コチョコチョしてやるか」


 無視!


「ほーら。これでどうだ?」


 やばい、笑いが収まらない。だめだこれ。


「ほら!」


 やめてほしい。本当くすぐったい。それに手かせのせいで抵抗すらできない、やばい。


「ほら!」

「あははははあはは」

「やっと反応してくれたか」


 昨日に続きこの人ほんとずる過ぎる、私に打つ手なしじゃん。


「はあ」


 昨日に続き食事場に着く。


「あーん」


 ご主人様が食べさせてくる。食べたくないが、食べないとまたこちょこちょされる。

 辛い生活だ。私は本当に逃れることなど出来ないのだ。


「今日は仕事で視察に行ってくる。お前も連れて行きたいが、今回の仕事上拘束されているお前を連れていくと、変態だと思われる可能性がある。だからお前はお留守番だ」

「だったら拘束を外して連れていけばいいじゃないですか」


 変態なのは疑う余地無いし。


「ダメだ」

「でしょうね」


 分かってましたよ。こう言ってくるって。毎度のパターンなんだから。


「それじゃあ行ってくる」


 と、ご主人様はお出かけになった。


 その間私はどうなるか? 部屋に置いておかれるだけだ。だけどまあ動けない訳だから実質監禁状態だけど……





 それから少し時間が経った。相変わらず時間の潰し方が悩ましいところだ、というかいない時くらい拘束外してくれていいのでは!?

 だって逃げれないし、誰の鑑賞物になるわけでも無いし。


「ひまー!」


 そう言って拘束されている足をバタバタとさせる。

 こんなの囚人と同じだ。よく十年間も精神崩壊しないで保ってるよ、私。うん。


「失礼します」


 と、一人のメイドがやってきた。


「さてと、ご主人様がいないということは」


 ん?


「あなたをいじめられるってことよね」


 そして私は首を絞められる。どうしてこうなった。

 いや、そんな冷静に突っ込んでる場合じゃない。苦しすぎて死にそう。


「私はあなたのためにずっとうっぷんをためてきたの。あなたの世話をしなければいけないということに、貴方が特別扱いされているという事実に。私はさあ、ムカつくのよね。あなたのすべてが!!」


 そして首を絞める力が強くなる。それに比例して私の苦しさも。


「あははははは。いい気味ね」


 そして今度はお腹を強く殴られる。


「ぐうう」


「なるほど、あのご主人様もよく考えているわね。こうすればあなたをいじめられるって。たしかに、いいおもちゃだわ。私もお金持ってたら絶対こんな使い方をするの」


 はあ、これで本当にストレスを解消できるとでも思っているのだろうか。私が告げ口をするとか考えないのだろうか。

 本当、しんどい。


「さて、次、私、ベッドに押し倒しても見たかったのよね。なんかこういうのっていいでしょ?」


 そしてベッドに押し倒された。


「あーでも、変に拘束されてるから、逆に詰まんないわね。この状況でもできることは……と」


 彼女はふと思い、私の顔面を殴った。


「シンプルな暴力があるじゃない。これで、ボコりまくれば楽しめるわね。でも、私がやったということをばれないようにしなきゃならないわね」


 ……誰が助けて。


「でも、そうだ! 殴るんだったら証拠が付きやすいから……」


 彼女は別部屋に行き、水の入ったバケツを持ってきた。


「これに顔をつければいいわね」


 そして彼女は私の顔を思い切りバケツにつけさせる。


「あははははは。いいね。苦しそうにもがくその姿。でも、あなたは手足が拘束されているから抵抗なんてできないっと。でも、出来る限り衣服をバタバタさせる。でも、解放されない。あはははは」


 不味い、このままでは本当に殺されてしまう。


(死にたくない!!)



「何やってるの!!!!」


 そう思った瞬間、部屋に一人の女の人が入ってきた。

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