第15話 同窓会
「先輩! よろしくお願いします」
「おう、まずは品出しをしてくれ」
学校をやめた後、私はバイトに行くことにした。勿論生活費を稼ぐためだ。私は確かにそろそろお金を稼げそうなところまで来ている。だが、今、稼げているわけではないし、お金を稼げたとしても、最初は雀の涙ほどであろう。
それに私はもう家にはいられない。家を借りて暮らし始める必要があり、その家賃も払わなければならない。
今の物価の日本ではバイトで生活するのは大変だが、ライターの収益とかたまに来る依頼とかそんなので食いつないでいる。
生活はしんどい、外食なんてもってのほかで、割引のお肉とかを買って生活している。運のいいことに、お母さんから選別で二十万円もらっているので家事用具は買えたのだ。
「よし、ライターを見よう」
そしてライターを見る。ゲーム用の方では私が高校を辞めたことは言っておいた。それもライターで流行っている有名な文章で。
(よし! 絶望の害龍クリア!)
早速その文章が見えてきた。絵を描くのはもちろん好きだが、ライターを見るのも好きなのだ。
(おめでとうございます!)
と返信しておいた。絶望の害龍とは、最近追加されたダンジョンで、一部では持ち物検査と言われるほどの、難関クエストなのだ。
(あれ難しかったです)
(そうですよね敵の攻撃が激しかったですし)
(ほんとですよ。本当クリアできてよかった)
そんな会話をしてまた絵を描くのに専念する。
ライターを見る時間で、絵を描けばもっと多くの絵が描けるのだが、それは疲れて、しんどいものになる。わがままかもしれないのだが、私は楽しく絵を描きたいのだ。
バイトしながら絵を描く生活、大変だが、生きがいを感じることが出来る。
ああ、感じる。勉強して大学に言って、上場企業に勤めるよりも、今の方が幸せだと、やりたいことをやれている今は幸せだと。
そして十年後同総会が開かれた。
「久しぶり! 雫」
着いていきなり菜月が声をかけてきた。
「いきなり学校を去るなんてひどいじゃない。私位心配したんだよ」
「ごめん。でも話の流れでそうなって」
大学に行かないのなら高校に行く必要もない。それがお母さんの考えだ。今は菜月ともほとんど会っていない。
「今はどうなの?」
「今はそこそこの稼ぎでようやくバイト辞めれるかもっていう感じ」
絵だけで年収一七〇万ぐらい、まさにあと少しなのだ。
「そう、よかったー。で、高校やめて後悔はしてないのね」
「うん。それは大丈夫。今楽しいし」
「そう。それは良かった」
「それで菜月は今何をしてるの?」
同窓会お決まりの話だ。
「私はね、今製薬会社ではたらいてる」
「そう、いい感じ?」
「たぶんね、もう少しで昇進しそうだし」
「そっか」
「そう言えば私の前の絵いいねしてくれなかったよね」
「毎回いいねするわけじゃないし」
「そうだよね、うふふ」
「何笑ってんの?」
「だって人と話すの久しぶりだもん。しかもリアルの人と」
私は普段バイトの人としか話さないし、そもそも相手が菜月だし。
「あれからもたびたびはネットでしゃべってたじゃん。みかんちゃん」
「そうだっけ」
「もう!」
(絵を依頼したいのですが)
なんか通知きた。
「え? これってあのライキンゲルガーだよね。雫がやってる」
「うん」
「すぐ交渉してきてや」
「待ってよ」
そしていろいろな話をして同窓会を楽しんだ。いっぱい笑い、いっぱいしゃべって、楽しかった。
絵を描きたいだけなのにー勉強という名の地獄 有原優 @yurihara12
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