厨二病に勝る病

やいり

 

 記憶から消し去りたい過去……私の中では中学2年生からの時期がそれにあたる。『厨二病』という単語はよく聞くが私もまた漏れずにその病であった。自分で言うのも烏滸がましいが当時は成績が良かったし顔もそこそこイケてると勘違いしていたため自分は無敵だと思っていた。まぁこんなのはみんな通る道だろう(?)が、私の重病はこれよりも他にある。


 中学生ともなれば男女問わず好きな人の1人や2人いるものだろう。そして私の好きな人は『先生』だった。

 先生は私の親よりも年上で結婚してる上に私と同年代の子供がいた。そんなのはもちろん承知の上で、一度ハマると周りが見えなくなり熱中してしまう性格(というのは大人になってから自覚したが)ということもあり、若い私は暴走した。

 先生が顧問をしている部活に入り部長になり、先生が教えている教科では必ず98点以上を取り、席替えでは1番近くで見たいがために絶対に真ん中の最前列を陣取った。遠くにその姿を見つければ校庭の反対側からでも大声で呼んだし行事の度に2ショット写真を撮りにいき、バレンタインももちろんあげた。他の先生からも同級生からも「○○先生の事が好きな△△」という今考えればイタい認識で通っていた中、当の先生は「うるせぇなぁ…」と言って呆れていた。そんな反応も嬉しかった。

 猛烈アプローチをし続けて2年近く経ち卒業式の日、母が役員の打ち上げに参加すると先生がいたので挨拶に行ったらしい。

「うちの娘がうるさくてすみませんでした。」

 と言うと

「よろしくお伝えください。」

 と一言だけ言われたようだ。

 卒業式が終われば先生も私に特別なメッセージをくれる。「全く困ったもんですよー(笑)」と苦笑しながらもたくさんの思い出話をしてくれる。と思っていた私はそれを聞いて随分と落ち込んだ。

 そんな……一言で終わり??もしかして…迷惑だった??

 若い女性にこんなに好き好き言われて嬉しくないおじさんがいるはずないと思っていたのに、その一言でふと我に返り恥ずかしさとショックと理不尽な怒りとでぐちゃぐちゃな感情になった。『若い』というかただのガキだった私からの猛烈なアプローチは本当にうるさかったのだろう。

 紛れもない私の黒歴史。だけど先生を好きになったお陰で勉強も部活も頑張れたし、結果今の旦那にも出会えた。この歴史が今の自分を作ったのだ。とはいえ先生を思い出すと恥ずかしいやら申し訳ないやらで複雑な想いになる。今先生に会えたら当時の事を謝りたいけど、それも嫌かもしれないな。

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