第四場・ブリブリボーダーライン
立ち稽古開始。それぞれ台本を手に持ちながら清四郎の演出を受けている。舞台上には真姫と幸子。それを舞台端で清四郎が演出をつけている。かおるは稽古から外れて退屈そう。
清四郎 「ちがうちがう、モンタギューは
幸子 「上手?えーっとかみて、かみて……」
清四郎 「左です左、舞台から客席を見た時に左が
幸子 「は、はい」
清四郎 「じゃあロミオ登場のところから。ユリさんすいませんね、代役やらせちゃって」
百合枝 「(舞台ソデから顔を出して)いえ、勉強になります」
真姫 「『あれはロミオじゃないか(モンタギューに)どうかあちらへ、なに私にお任せください、ダメ元でもいいからあいつの悲嘆の原因を聞いてみましょう』」
清四郎 「見てみて、ちゃんとソデの方を見て遠くからロミオが来るのを発見して」
真姫、ちょっと考えてから自分の服の袖を見る。
清四郎 「自分の袖見てどうすんだよ!ギャグか、ギャグのつもりかそりゃあ!舞台のはじ、ロミオが出てくるとこを見るんだよ!」
真姫 「え~、そんな専門用語出されてもわかんないし~」
清四郎 「専門用語じゃねえ!それぐらい一般教養で知ってろ!」
石崎、電話を持って登場。
石崎 「クマさんすみません、照明の石井さんから打ち合わせの件についてお電話が」
清四郎 「(みんなに)ごめんちょっと待ってね。(電話)もしもし森野です、あーお忙しいところすみません今回もお世話になります。いえいえ大丈夫ですよ『湘南山猫』さんの公演が終わった後で。はい、はい、はいすみませんよろしくお願いします(切る)はい、じゃあ同じとこから」
かおる 「ね~、ジュリエットのシーンいつから始まるんですかあ~。かおちゃん出番がなくてたいくつ~」
清四郎 「ま~だ!頭のシーンちゃんと配役して芝居をつけないと先に進めないでしょうが」
真姫 「そ~だそ~だ、だいたいジュリエット役やるのはあたしだしぃ」
かおる 「え~、真姫ちゃんみたいなド素人がジュリエットやるなんてかおちゃん恥ずかしくって赤面しちゃう~」
真姫 「むっかあ~、そんな頭のてっぺんからキーキー変な声でしゃべるアニメ声女にリアルな女性役ができるっての?」
幸子 「リアルな女性役だったら、ここは人生経験が豊富な私がやればいいんです、ほら……」
真姫 「やめてよ~、ジュリエットが貞子になっちゃう~」
幸子 「ぬわんですってぇ~(目をむく)」
真姫 「だからその目がこわいっちゅーの!」
かおる 「なにいってるのよう、ジュリエットに一番必要なのは可憐ではかなげな愛くるしさでしょう?だったら私が一番ぴったりじゃな~い、色気も可愛げもないサーファーギャル(笑)はすっこんでらっしゃ~い」
真姫 「なんだとコラ」
かおる 「なによう~」
真姫とかおる、恵子もまじって口げんか、百合枝、ジュリエット争奪戦に入り損ねてソデでもじもじしている。
清四郎 「やかましい!ジュリエットは後で厳正な審査の上で決定すると言うとろーが!いいから稽古しろ稽古!はい同じとこ……」
また石崎が電話を持って入ってくる。
石崎 「クマさん、音響オペの小野さんからお電話が」
清四郎 「ああ、もう!(電話)もしもし森野です。……はい、今回音ネタはこちらで編集してお渡ししますのでプランは無しで大丈夫です、その分割引していただくということで……はい、すみませんわがまま言っちゃって……はいよろしくお願いします。はい(切る)えーっと、どこだっけ?」
百合枝 「(ソデからひょっこり顔を出して)ロミオ登場からです」
清四郎 「そうだったそうだった、はい、じゃあ……」
石崎 「クマさぁ~ん、舞台監督の沢井さんからお電話が」
清四郎 「んが~!(電話)ごめん、稽古中だから後で電話するわ(切る)はい、じゃあロミオ登場から」
百合枝 「…………」
清四郎 「ロミオ?ロミオ!」
百合枝 「うひゃあ!(本を落とす音)」
清四郎 「どしたー?」
百合枝 「(ソデから顔を出して)す、すみません、なかなか始まらないから本読んでてつい夢中に」
清四郎 「稽古中に他の本読むな~!台本読め台本!」
石崎 「クマさあ~ん」
清四郎 「今度は何だ!」
石崎 「プーさんもといオーナーからお電話が」
清四郎 「くそっ(電話)何だよ、今稽古中だ」
健太郎 「(なぜか電話持って登場)あ、稽古がんばってる~?俺ちゃまこれからでワイハーでバカンスな~。かおるちゃんにお土産楽しみに待っててねって言っといてね~、あ、オメーの分はね~から」
清四郎 「うるせえよとっとと行けー!(健太郎引っ込む)はいロミオ……」
幸子 「あの……」
清四郎 「なんだ!?」
幸子 「上手ってどっちでしたっけ?」
清四郎 「うがあああああああああああああああああああ!」
清四郎、とうとうキレて卒倒する。石崎あわてて介抱しながら
石崎 「はいはいはい、みなさんちょっと休憩しましょう休憩~」
全員ゾロゾロと退場、百合枝、ちょっと心配そうにソデから清四郎の様子を伺いつつ退場。清四郎と石崎の二人だけが舞台に残される。
石崎 「大丈夫ですか?やっぱり無茶ですよ演出やって制作やって音響プランやって主演までやるのは」
清四郎 「その上演技レッスンまでやってるからなあ、さすがに限界だ……」
石崎 「どうします?」
清四郎 「……仕方ない、演出はやっぱり外部に頼もう」
石崎 「え、今からさがすんですか?それはさすがに時間が……ってまさか!?」
清四郎 「背に腹は代えられん」
石崎 「やですよう、僕反対ですよ『あの人』呼ぶの。また大ゲンカするにきまってんじゃないですか」
清四郎 「俺だって呼びたくはねえよ!でも、もう仕方がない」
石崎 「う〜、知りませんよ、もう……」
石崎、電話を清四郎に渡して去る。清四郎、電話をかける。
清四郎 「もしもし?おう、俺。ああ久しぶり……実はな……」
暗転
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