第4話課長のひみつ

業務部船舶課長の小林は頭を悩ませていた。初の女性管理職として、色んな悩み事がある。体育会系のこの職場では、女性だからと言う理由だけで容赦無いセクハラを受けていた。

唯一、社長の将棋の師匠である平岡に今後の行く末を相談する事がある。

大抵、そう言う日は、ランチタイムに2人で喫茶店でコーヒーを飲んでいる時だけだ。

珍しく、午後の定時まえに平岡が小林に声を掛けてきた。

昔ながらの馴染の居酒屋の千代に誘われたのだ。

小林は話したい事があり、OKした。

小林と平岡は、居酒屋千代ののれんをくぐった。

「いらっしゃいませ〜。あら、平岡さんお久しぶりです。隣の方は?」

「僕の上司の小林さんだ」

「はじめまして、千代の女将の凛です。隣は私の娘のななみです。宜しくお願い致します」

「はい」

と、小林は小さく返事した。

2人はカウンター席に座り、黒ビールを注文した。店長の折田も平岡に挨拶にきた。

折田が、学生アルバイト時代を知っている客なのだ。

ななみが、ツマミのオーダーを取りに来た。

「ななみちゃん、いくつなの?」

「16です」

「高校生?」

「高校は、先月、退学しました。私は居酒屋にいる時だけが、楽しいんです」

「そうか。課長、何にします?」

小林はページを捲りながら、かつおのたたきと軟骨の唐揚げを注文した。


「課長、かつおのたたきはスライスニンニクが凄いですよ」

小林は黒ビールを飲みながら、

「韓国じゃ、朝からキムチよ。ニンニクなんてまだ良いじゃない。タブレットもあるし」


2人はハイボールを飲みながら、かつおのたたきを食べ始めた。

「さて、そろそろ尋問します、課長」

「はい」

「あなたは、社長と夜な夜な飲みに行ってるようですが、男女の関係ですか?」

「……」

「ウワサですが」

「アハハハ。ウソ、ウソ。ただ、社長さんは片親で娘さんを育て上げて、先月、男と籍を入れたみたいで、寂しいから付き合って!と、懇願されたから飲んでるの」

平岡はスライスニンニクをダイレクトに口の中に放り込み、

「何で、俺じゃ無いんだ?」

「ま、女性としての意見を聞きたかったみたい。金曜日も社長と飲むけど来る?」

「うんうん。行く!」

「私は50よ。男なんて出来るはずがないじゃない。平岡君だって、彼女作れば?滝川さんとか」

滝川恵美は、キス魔だ。

「課長、ここ奢るんでバーに行きましょうよ」

「いいわね」

2人は、千代を出てタクシーでバーに向かった。

その晩は、1時まで飲んだ。

翌日、オフィスがニンニク臭かった。


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業務部船舶課の面々 羽弦トリス @September-0919

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