第2話 『春華さんと間接ks』
「どうしたんです?いきなり・・・」
ここは、この高校に3箇所設置してある自販機スペースのひとつ。
ここでは種類豊富なジュースが並んでおり、学校外の自販機よりも少しだけ安くなっている。
「う、ううん!?ちょっと動揺しただけ・・・」
「・・・・・・いやいや」
もし動揺したならちょっとどころじゃないでしょ。
明らか挙動不審になってたし。
「い、いいの!それより!な、なに買う!?」
「ええ・・・強引だなぁ」
明らかに動揺してキョドる春華さん。怪しい。かわいい。
怪しいが・・・ここで聞こうとしても答えてくれる確率は限りなく低いし、機嫌を損ねる危険性がある。不機嫌楓華さんはいろいろとめんどくさい。かわいいけど。
ここは春華さんに乗るのが正解に思われる。
と、判断したはいいものの・・・なに買おう?
う~ん、僕の気分に合うものは・・・っとあった。これにしよう。
飲みやすすぎるブラックコーヒーで有名なコーヒー。
「それじゃこれにします」
「ん!?もう決まったと?早かね!じゃあ、私は・・・これかな」
春華さんはロイヤルミルクティーを選んだらしい。
「というかこれ・・・ブラックコーヒー?飲めるの?」
「飲めないもの買いませんよ。これ、ブラックコーヒーなんですけどすごい飲みやすいんですよ」
「そうなんだ・・・んじゃあさ、それ、一口ちょーだい?」
・・・はいぃ!?!?今なんて!?
一口ちょーだい?一口ちょーだいって言ったよねこの人!!
そんな男を勘違いさせるようなことを軽々と言ってのけるとは・・・
もしや僕のことが・・・いや、それは無いような気がする・・・からかおうとしている?でも春華さんそんなことする人じゃないし・・・アニメとかドラマのシーンにあって再現したくなった、とか?・・・それとも単純に信用してくれてるから?・・・それともやっぱり僕のことが・・・いや、でも・・・
う~ん、わからん!!
こ、ここは・・・乗るのが正解か・・・?
い、いやでも嫌われる可能性も・・・ん?いやいや春華さんから誘ってきてさらに嫌われるのは春華さんのキライな理不尽だよな・・・じゃあ嫌われることはない。
なら、気にしないふりして乗るのがいいのかも知れない。
「いいですよ?どうぞ」
「だよね。無理だよね、ごめ・・・へ!?よ、よかと!?」
「はい。春華さんならいいですよ。どうぞ」
「え、え、あ、うん・・・いただきます」
ペットボトルを開けてコーヒーを一口。
春華さんの白い喉が妙に色っぽく蠢く。な、なんか良くない雰囲気を感じる・・・
「・・・あ、ほんとだ。飲みやすい」
「そうですか、それは良かった」
「はい。ありがと。あ、そうだ。颯翔くんも私の一口どーぞ」
・・・はい?
「・・・はい?」
「だから、颯翔くんは飲まないの?・・・おーい、聞こえてる?」
聞こえてはいるよ。理解はできないけど。
え?今飲めってこと?今すぐ春華さんが飲むやつを飲むってこと?
「・・・今?」
「今!」
即答!?
ま、まあ春華さんの『一口もらったからあなたも一口どーぞ』の理屈はわかります。わかるんですが・・・それ男にするものじゃないと思う。
「ええ・・・えと、一応確認なんですけど・・・春華さんは間接キス大丈夫なんですか?」
「私?間接キス?ぁっ・・・・・・・・・全然大丈夫だヨ?」
カタコトじゃないですか。
まったくだいじょばない気がするんですがそれは。
「・・・・・・本当に?」
「う、うん!!ほんとほんと!」
まずは整理してみよう・・・春華さんは大丈夫と言っている。僕としても特にデメリットはない。お互い恥ずかしい。お互い恥ずかしい!!
・・・やるか。
「それじゃ・・・お言葉に甘えて。」
「う、うん・・・」
う~ん・・・おいしいとは思うんだけど・・・味がしない。
これが間接キスの悪魔、か・・・(違います)
「というかそろそろ休憩時間終わりますし、早く戻らないと。」
「うわ、ほんとだ。え~もう終わり~?」
「憂鬱だって顔してますね。」
「だってほんとやけん!サボっちゃおうかな。」
不満顔でぶつぶつ文句を垂れる春華さん。
こうなってしまってはなかなか素直に機嫌が戻りません。
・・・はあ、仕方ないですね。
僕は春華さんの頭に手をポン、と置いてゆっくり撫でる。
これは、春華さんの機嫌を速やかに直す必要があるときにするある種のおまじないである。
「春華さん、憂鬱になるのはわかるよ。僕だってそうだから。でも、あと1時間がんばろ?終わったら何かアイスでも奢るから。」
「・・・・・・うん。頑張る。アイス、約束だからね?」
「うん。えらいえらい。」
最後に頭をポンポンすればあら不思議、春華さんの機嫌が元通りに!
「よし!頑張るぞーー!あ、アイスはパピコンね!」
「わかりましたよ。」
上機嫌の春華さんに連れられるがまま、僕は学年集会に向かうのだった。
――――――――――――――――――――――――――――――――
ふうううううううう、落ち着け!落ち着け私!!
ここは、この高校に3箇所設置してある自販機スペースのひとつで、ジュースが多い場所。別名ジューサー。
じゃなくて!ああああああ、落ち着けって私!!
「どうしたんです?いきなり・・・」
「う、ううん!?ちょっと動揺しただけ・・・」
動揺したなんて口滑らせんな私ーーー!!
も~~~~思考がまともに働かない!
「・・・・・・いやいや」
ほらぁ!颯翔くんも引いちゃったよ!!
と、とりあえず強引にでも話をそらさないと!
「い、いいの!それより!な、なに買う!?」
「ええ・・・強引だなぁ」
私が一番わかってるし後悔してるから突っ込まないでーー!
「それじゃこれにします」
え、はや!気分に合うものもうあったんだ。
颯翔君、気分に合うものがないとなかなか決まらないんだけど・・・今日はラッキーデーみたい。
「ん!?もう決まったと?早かね。んじゃあ、私は・・・これかな」
私は無難にロイヤルミルクティーにする。
特にほしいものがない時はこれかカフェオレの二択にしている。
「というかこれ・・・ブラックコーヒー?飲めるの?」
颯翔君苦いものあんまり得意じゃなかったような・・・
「飲めないもの買いませんよ。これ、ブラックコーヒーなんですけどすごい飲みやすいんですよ」
へええええ、そんなものがあったなんて・・・気になる、けど・・・2本目はいらないなぁ・・・あ、そうだ。颯翔君にもらったらいいじゃん。
か、間接キスはしちゃうけど・・・まあ、初めてじゃないし!?
というか颯翔君の気分に合ったものって、おねだりしてもあんまりくれないから多分断られるし?
「そうなんだ・・・んじゃあさ、それ、一口ちょーだい?」
いっっちゃった~~~~!!どう!?どうかな!?やっぱ無理だよねぇ!?
よし、あきらめる準備だ!精神的ダメージを少しでも減らすために!!
「いいですよ?どうぞ」
「だよね。無理だよね、ごめ・・・へ!?よ、よかと!?」
え!?え!?いいの!?マジで!?
「はい。春華さんならいいですよ。どうぞ」
春華さん、なら・・・か。
えへへへへへ・・・嬉しい。好き。
「え、え、あ、うん・・・いただきます」
ゴクリ
あ、普通においしい。
流石颯翔君、いろんな事知ってるなぁ。
「・・・あ、ほんとだ。飲みやすい」
「そうですか、それは良かった」
ふ、とほほ笑んでくれる。えへへ、颯翔君の優しい笑顔大好き。
「はい。颯翔くんありがと。颯翔くんもどーぞ」
「・・・はい?」
「だから、颯翔くんは飲まないの?・・・おーい、聞こえてる?」
あれ?颯翔君なに固まってるんだろ?
私なんか変なこと言ったかな?颯翔君が飲みたいものもらったからお返しにと思ったんだけど、颯翔君飲まないのかな?
「・・・今?」
「今!」
じゃないと私飲み切っちゃうし。
「ええ・・・春華さんは間接キス大丈夫なんですか?」
「私?間接キス?・・・・・・・・・全然大丈夫だヨ?」
・・・まさか颯翔くんも気にしてくれてたなんて。
い、いやまあ、恥ずかしいけどね?でも、颯翔君に振り向いてほしい身としてはですね、その、ここで押すべきだと思うんですよ。
「・・・・・・本当に?」
「う、うん!!ほんとほんと!」
なんて言ってるけど内心バックバクなのであります!
あと断られたら気まずいなぁなんて考えたら気が気じゃないよぉ!!
「それじゃ・・・お言葉に甘えて。」
「う、うん・・・」
えへへ・・・なんか、また距離が縮まったような気がする。
「というかそろそろ休憩時間終わりますし、早く戻らないと。」
「うわ、ほんとだ。」
「憂鬱だって顔してますね。」
「だってほんとやけん!」
うううううう・・・幸せな気分が逃げちゃうよ・・・
せっかく二人きりでいいことあったのにぃ・・・
どうしようもないことだとわかっていても、口から文句が出てしまう。
颯翔君という1番の理解者といるからなおさら。
ああ、良くないのはわかってるんだけどなぁ・・・
その時、私の頭に温かいものが触れた感触があった。
それは、なじみ深い安心する感触だった。
私の機嫌がどうしても直らないときに、颯翔君がよくしてくれた本人曰く『おまじない』の頭ナデナデ。私の大好きな行為だ。
「春華さん、憂鬱になるのはわかるよ。僕だってそうだから。でも、あと1時間がんばろ?終わったら何かアイスでも奢るから。」
「・・・・・・うん。頑張る。アイス、約束だからね?」
「うん。えらいえらい。」
ぽんぽん
えへへへへへへへへへへ・・・颯翔君のこれ、めちゃくちゃ好きぃ・・・
頭ナデナデという行為ももちろん好きなんだけど、私が真に好きな理由はほかにある。
今はそんなに機嫌悪いわけじゃないけど・・・私の機嫌がほんとに悪い時に私の気持ちを察して何とかしようと頑張ってくれるのがすごくうれしいの。
これがあるだけでその日は絶対に頑張れる。そんな『おまじない』。
颯翔君とお付き合いしたら毎日してほしいこと1位!!
あと放課後デートの約束もしてくれたし、あと1時間くらいどうってことはない。すぐに終わる。アイス?そんなものはおまけに過ぎない。
颯翔君は奢ってくれるみたいだけど、あとでお金は返します。
「よし!頑張るぞーー!あ、アイスはパピコンね!」
だって半分こできるし。
「わかりましたよ。」
大好きな優しい笑顔を浮かべる颯翔君を連れられて、私は学年集会に向かうのだった。
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