後ろの席の春華さんがいろいろな意味でかわいすぎる
猫の灯籠
第1話 『後ろの席の春華さん』
咲き誇る桜の季節・・・僕は晴れて高校生となった。
新しい制服、綺麗な教室、初めて会うクラスメイト。
僕の周りのなにもかもが初めてのものだ。
「また私の前になったね、颯翔くん?」
ただひとつ、僕のひとつ後ろの席に座る彼女を除いて。
「そうですね。また僕の後ろになりましたね、春華さん?」
「なになに、私の真似?」ニヤニヤ
「いえいえ、同じ言葉を返せばどういう反応をするのか気になりまして」
「あ、そっか。そのパターンはまだしてなかったね。」
フンフンと頷く春華さん。
謎に緊張感のある雰囲気。
この雰囲気では、僕らが因縁のライバルみたいに見えるかもしれない。
もしくは腐れ縁の幼馴染みか。
ただ、実際にそんなことはなく───
「いやーまっさか今年も前後とはね!」
「名字が似てるので、同じクラスになったら前後というのはまあわかるんですけど・・・まさか今年も同じクラスだとは」
「ねー!今年なんか8分の1だよ8分の1!ここまで来ると運命じゃないの?」
「運命を通り越して何者かの意思を感じるレベルですね」
「颯翔くんはロマンが足りなか!」
キャッキャとはしゃぐ春華さん。
そう。僕、
なんと小学一年生から中学三年生までの9年、そして高校一年生も前後なのだ。
・・・ホントに何者かの意思を感じません?
ここまでの会話を見ての通り、決してライバルなどではなく普通に仲がいい。
実際10年も前後だと嫌でも気になるし、だから付き合いもかなり長い
「いやー颯翔君が前で安心したよー友達出来るか不安だしー!」
「嘘つかないでくださいよ。あなた1日経てば友達できてるでしょう」
「それでもだよー!それに・・・」
途端にうつむく春華さん。再び顔を上げると現れたのはけだるげな表情。
むす~っという効果音がよく似合う。
「うちの素ば出しぇる人が近くにいると安心するしね。」
「それはそうかもですね」
この春華さん、実は人との付き合いがかなり苦手なタイプなのだ。
見かけ上は楽しんでいるけど、終わったら「あ~、だるっ」とか言うタイプなのだ。
まあ、僕が知らないだけでそんな女の子は割と多いのかも知れないけど。
そうそう、それと家族とかの親しい人といるときだけ、たまに博多弁がでてくる。かわいい。
そしてどうやら『博多弁で話せる人リスト』に僕も入っているらしい。
「だから、颯翔くんにはサンドバッグになっていただきます♪」
「ルンルンでそんなこと言うとか人間じゃないよあなた。」
「じょ~だんだって!まあ、その・・・話は聞いてほしいかな~って。」
エヘヘ、と照れ笑いを浮かべる春華さん。
ちなみに春華さんは普通に美少女である。普通にかなりの美少女である。
きれいな茶髪に胡桃色の瞳。春華さんは母方の祖母がイギリス人のクォーターで、目鼻立ちがはっきりしていて、少し日本人離れした顔をしている。
そんな美少女と10年も一緒にいるのだ。
まあ、その・・・ね?嫌でも、意識してしまうわけで。
「それくらいいくらでも聞きますよ」
「そっか・・・えへへ、さっすが颯翔くん!」
やはり美少女。笑顔も綺麗。
「皆さん、おはようございます。担任の
担任は若い女性の先生で、担当教科は英語。
スーツをパリッと着こなしてちょっと厳しめの印象をうける。
とんとん
「・・・先生、美人やね」
「まあ、そうかもしれませんね」
あなたが言ったら嫌味になる可能性もなきにしもあらずだけどね。
この人自分の容姿を過小評価してる節があるからなあ。
「颯翔くんはあげん感じん顔が好みと?」
「・・・なんでそんなこと聞くんですか」
「う~ん・・・なんとなく気になったから?」
「なんで疑問形なんですか・・・」
ちょっとドキっとすること聞かないでよびっくりするなぁ・・・
う~ん、キツめの人は苦手かなあ。
「で、どうなの?」
「どちらかと言うと、苦手ですかね」
「そうなんだ・・・えへへへ」
「どうしたんです?」
「なんでもな~い」
そんな思わせ振りなことを言うとかこやつもしや小悪魔だな?そうだな?
・・・そんな春華さんもいいと思ってしまった僕を殴りたい。
なんか、美少女って割とどんな姿でも似合うよね。
素材の良さの重要性を変なところで実感する晴翔なのであった。
「───では、連絡は後々行います」
先生、大したこと話してなかったな。
「あ、先生の話聞いてなかった」
「このあとの予定くらいしか言ってませんでしたよ?」
「そっか・・・さすが颯翔くんだね、ちゃんと聞いてるんだ」
「たまたま聞こえていただけですよ」
そのまま自由時間になり、教室が一気に騒がしくなる。
何組に同中のやつがいるとか、かわいい子とかイケメンが何組にいたとか。
うるさいなぁ。初日くらい教室でゆっくりしとけばいいのに。
と、思うのは近くに春華さんがいるからなのかもしれない。
「颯翔くん、うるさいなぁって顔してるね」
「実際思ってますから。そういう春華さんは・・・完璧なポーカーフェイスで」
「失礼だなあ、私がうるさいなんて思ってない可能性もあるでしょ?」
いや、ないでしょ。絶対。
「あなたに限ってそんなことは絶対ありません断言します。」
「うちそげん信用なか!?」
「何年一緒にいると思ってるんですか。」
「え?あ、あう・・・」
「で、実際どうなんです?うるさいなんて思ってないんですか?」
「いや、まあ・・・思ってないこともないけど、ね」
ほらやっぱり。
「そ、それより!せっかくの休憩なんだし、なんか・・・飲み物買いにいかない!?」
「飲み物ですか?いいですけど・・・」
なんでそんなにいきなり?と言うことはできなかった。
ぐい、っと手首をつかまれたからだ。
「よ、よ~し!じゃあ、行くぞー!」
「え、あっ、ちょっと待ってくださいよ!」
「…あれ?あの茶髪のハーフっぽい子は?」
「…え?ああ、さっき前の席の男子とどっか行ったけど」
「…マジか・・・狙ってたんだけどな」
─────────────────────────
EPISODE1『前の席の颯翔くん』
桜が舞い散る季節。私は晴れて高校生になった。
教室も、制服も、クラスメイトも。何一つとして、私がよく知るものなんてない。
たった一人。前の彼を除いて。
「また私の前になったね、颯翔くん?」
私のひとつ前の席の男子、皐鈴颯翔くん。
私なりの言葉で彼を一言で表すなら、隠れハイパー良物件である。
顔、藍髪碧眼の和風塩顔イケメン。性格、気配り上手で優しい。身長180cm超えで外から見せないけど筋肉しっかり。頭、回転が早くて普通にいい。運動、とある競技で全国大会優勝。料理、めっちゃおいしい。
でも、メガネをかけていて髪がちょっと長いからか、あんまり目立たない。
ね?私が言いたいことわかったでしょ?
まあ、その眼鏡も度が入ってない伊達なんだけど。目が疲れにくくなるように掛けてるらしい。
でも、彼のことをある程度知ってしまったら、どんな子も好きになってしまうと思う。
なんでって?私が好きになってしまった女の子だからだよ。
仕方ないじゃん。私だけに素を見せてくれる隠れ超イケメンだよ?
しかも、なんでか知らないけど10年連続で席前後だし。
10年連続だよ!?もうこれ運命だよね!!?
もはや神様が颯翔くんと結婚しろって言ってるよね!?
いやね?私も重いなぁって思うよ?でもさ、こんな運命的なことになったらそう思ってしまうのは理解してほしいの!
今年も颯翔くんと前後だぁ・・・えへへへ、やったぁ!!
やった!やった!颯翔くんと前後!!
颯翔くんの後ろが嬉しすぎて、柄にもなく内心はしゃいでしまった。
くんにははしゃいでるのがバレてるかもしれないけど、彼、鈍感だし気にしないことで事なきを得るのです!
あ、そうそう。私たまに博多弁が出るんだけど、幼稚園まで博多にいたのと最近までゴリゴリ博多弁の父方のおばあちゃんとおじいちゃんが一緒に住んでたからそれで気が抜けた時にたまに出るんだよね。
・・・あとは?颯翔君に意識してほしい時とか?で、出ちゃうというか意識してるというかなんというかその・・・
うん。はい。博多弁、かわいいよね。
「皆さん、おはようございます。担任の
うわぁ・・・先生、美人だなあ。
あんな感じのカッコいい系の美人に憧れてるんだよね。
まあ、私も整ってることは認めるんだけど・・・隣の田は青く見えるというか、無いものねだりというか。
もしかして、颯翔くんはあんな人が好みなのかな?・・・気になる。
ちょっと怖いけど・・・聞いてみよう。
「・・・先生、美人やね。」
「まあ、そうかもしれませんね。」
ドキッとはしてないか。
「颯翔くんはあげん感じん顔が好みと?」
「・・・なんでそんなこと聞くんですか」
「う~ん・・・なんとなく気になったから?」
「なんで疑問形なんですか・・・」
颯翔くんが好きだからなんていえないからだよー。
・・・なんか恥ずかしくなってきた。
「で、どうなの?」
「どちらかと言うと、苦手ですかね」
「そうなんだ・・・えへへへ」
そっかー、苦手かぁ。颯翔くんは苦手なのかぁ。・・・えへへ、良かった~・・・
「どうしたんです?」
「なんでもな~い」
「───では、連絡は後々行います」
あれ?先生の話もう終わってる。颯翔くんのことで頭いっぱいになってて話聞いてなかった。
「あ、先生の話聞いてなかった」
う~ん重要なこと言ってないといいんだけど・・・言われてるとピンチだなぁ。
「このあとの予定くらいしか言ってませんでしたよ?」
「そっか・・・さすが颯翔くんだね、ちゃんと聞いてるんだ」
「たまたま聞こえていただけですよ」
先生の話はたまたま聞こえるものじゃありません。ほんとびっくりするほど器用だなぁ颯翔くん。
先生の話が終わって自由時間になった。
あ~も~うるさいなぁ。イケメンとかかわいい子とかどうでもいいし!
特に男子!あんたら人評価できるほどの顔してないくせに何を偉そうに!!
颯翔くんの顔を見ると、『うるさい・・・』って顔をしていた。
フフッ、瑞樹くんと私と同じなんだ。なんか嬉しいなぁ。
って私がうるさいって思ってたの颯翔くんにバレてるんだけど!!?
え?え?私そんな分かりやすかった!?
そんな分かりやすいんだったら私が颯翔君のこと好きなのもバレて―――!
な、何年一緒にって・・・も、もう!颯翔くんたら女の子を喜ばせるのが上手いんだから!
そんな私のことわかってるみたいに言って・・・もう!(照)
「そ、それより!せっかくの休憩なんだし、なんか・・・飲み物買いにいかない!?」
「飲み物ですか?いいですけど・・・」
なんでいきなり?なんて言わせない。つべこべ言わずについてこい!
私は颯翔くんの腕をつかんで強制的に連れていくことにした。
「…ね、あの男子もしかしてイケメンじゃね?」
「…でもハーフっぽいめっちゃかわいい子が連れてったね」
「…あーもしかしてあの子の彼ピ的な?くっそ先見つかってたか」
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