旅路

 ネリネ村を出た後、2人は眩しい光が照らす森の中を歩いていた。


 「アイリス、行き先は決めているのか?」


 「もちろん!隣国のオルタンシア帝国よ。王宮にいた時からこっそり連絡を取り合っていたの。けれど少し遠回りして行きたいと思う。」


 「なぜだ?そろそろ王国が異変に気づいてお前を探し始める頃だと思うが。」


 「せっかく自由になれたもの。昔からやってみたかったの。人助けをしながら、のんびり旅をしたいわ。」


 「まったく...だったら、人里の近くを通りながら行くか。」


 「ええ!」


 

 最初に訪れた村はドワーフによる被害に悩んでいた。なんでも、冒険者でも倒すのが難しいと言われるキングドワーフがいるため無闇に手を出せないらしい。しかし、女神の子であり、チートと言っても良いほどの力を持つアイリスにとって、キングドワーフを倒すなど朝飯前だった。火魔法や風魔法、水魔法などを使って全てのドワーフを滅殺し、ドワーフに怪我を負わされた村の住民たちを治癒魔法で助けた。

 次に訪れた村では、畑の干魃に悩んでいた。水魔法で土地を潤し、物を作り出すスキルで水路をつなげ回った。そして、大手の行商に連絡し畑で収穫できた物を出荷できるよう手を回した。

 またある村では、他国の内戦に巻き込まれ死傷者が多発していた。すぐさま癒し魔法で兵士たちの心を安らかにし、治癒魔法で治した。荒れた土地には栄養と水分を与え、死者には安らかに眠れるよう立派な墓を作った。


 美しい女神様と神獣が舞い降りたと涙を流して喜ぶ者、どうにかして力を奪い取れないかと嫉妬した魔術師たちと手を組む者、そして...「やっと見つけた。」と舌舐めずりする者。

 2人がオルタンシア帝国に到着する頃には、その働きが世界各国のあらゆる人々まで広がっていた。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 「オルタンシア帝国、国王陛下に申し上げます。アイリス様とその従魔フェンリル様が到着いたしました。」


 「そうか!」


 心から嬉しいというような表情を浮かべた彼の名は、カクタス。エランティス王国のロバートと同じく、若くして王位を譲られたオルタンシア帝国の国王であり、アイリスの自由を誰よりも望み、誰よりも彼女が自由になることに貢献することになる男だった。


 


 

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