恐ろしい事態(新国王視点)
埃をかぶった部屋。まずい料理。質の悪い使用人。次々と現れる魔物。
「もう我慢できない!!!おい使用人!宰相を呼べ!!」
(一体、何が起こっているんだ?こんなこと今まで一度もなかったぞ。)
「失礼致します。どうか致しましたか?」
「見ればわかるだろっ!邪魔なアイリスが出て行き、父上が王位を俺に譲ってくれたまではよかった。それなのに何だこの扱いは?!そこらの貴族でさえもっと良い生活を送っているぞ?シャルロッテなんて苦労してきてやっと王妃になれたというのにあまりにも可哀想ではないか!」
「はぁ。しかし...。お言葉ですが、このようにしたのはあなたですよ?」
「何だと?この期に及んで俺に責任をなすりつけるのか!?」
「では説明致しますね。まず、こうなってしまった1番の原因はアイリス様です。あの方は女神がこの国を救うために授けてくださった方です。そのようなお方がこの国を出ていってしまった。アイリス様によって成り立っていたも同然のこの国は力を失い、恐れた貴族たちが続々と出ていってしまいました。王宮にいた使用人たちも、優秀な騎士団も、ましてや平民たちもそれに続きました。」
(なぜこの宰相はこの恐ろしい事態を淡々と述べられるのだ?まるで、ざまあみろとでも言うような顔で...)
「ちょっと待て。俺は許可していないぞ?」
「元国王陛下が許可しておられましたが。」
「なん...だと。」
(そんな。俺の知らない所でこんなにも事が進んでいたとは。あの時アイリスと絶縁しなければ、いや、シャルロッテを王妃にしたかったのは本心だ。)
「!!なあ、アイリスを連れ戻せば元に戻るか?」
「...おそらくは。」
「よし!今集められるだけの人員を集めてアイリスの捜索をはじめろ。今すぐにだ!!」
宰相の顔が途端に真っ青になる。
(アイリスは自由にさせてやりたいってのか?)
「国王陛下、それは...」
「お前逆らうのか?」
「い、いえ。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
その夜、夢を見た。
「今日の昼の宰相との会話、聞かせていただいたわ。」
「ん、誰だ?」
夢の中とは思えないほど、声にリアリティを感じた。
そして、目の前には1人の美しい女性が立っていた。
「ふふ。私がわからないなんて。あなた本当にこの国の国民なのかしら。」
「何だと?!無礼な!」
「神殿に行っているものなら分かるはずよ。私は女神。ずっと昔からこの国とオルタンシア帝国を守ってきたわ。」
「ますます分からん。そもそも女神が国王に何の用だ。」
「アイリスの話よ。あなた、あの子に随分と酷いことをしてくれたじゃない。」
(なぜか女神の顔は笑っている。アイリスのことはそんなに大事に思っていないのか?)
「だから何だ。別にそんなこと今は関係ない。女神が何と言おうが俺はアイツを見つけ出す。」
「そう。」
少し間を置いた後、また口を開いた。
「私、笑っていないと怒りが爆発して今にもこの国を粉々にしてしまいそうなの。だからそろそろ行くわね。あなたにあの子は捕まえられない。それだけ言っておくわ。」
...
(一体、何だったんだ。)
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