新たな出会い

 「お父様、お母様。女神の子とも呼ばれ、周りから人間として見てもらえなかった私を愛してくれて、本当にありがとうございました。婚約破棄され、王子にあんな無礼をしてしまった今となっては、ここにいられません。私はこの国を出ます。」

 

 女神の子とはいえ、私が生まれたのは上級貴族の夫婦の元だった。

 生まれた次の日には王族の耳に入り、離れ離れにされてしまったけれど、月に1回会わせてもらうことができた。その度に2人は私のことを心から愛してくれた。

 本当に...


 「感謝しかありません。」


 「アイリス...」


 2人は顔を見合わせ、頷いた。


 「私達はいつまでもあなたの味方よ。」


 「そうだ。お前の幸せを願っている。」


 2人は私が家を出るまで寂しそうな顔をせず、笑ってくれていた。

 けれど、私が外に出た時、扉の向こう側からすすり泣く音が聞こえた。


 「お父様、お母様、行ってきます。」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 「さて!これからどうしましょうか。」


 王宮に戻るのは絶対に嫌。かと言って1人で旅をするのは危険。魔物に襲われたら一発で...


 ってあれ?私って女神様の子どもって言われているんだよね?全然感じないけど、治癒魔法は使えるしほぼ毎日私の力を使い続けてこの国が成り立っていたんだから...私って結構強いんじゃっ!?


 とりあえず、この国で1番魔物の被害が多発している森へ向かうことにした。


 森の前に立つと恐怖心を覚えた。ここに、入るのか、と。


 「キャアア!!!」


 心の準備をしていた時、女性の叫び声が響いた。


 「助けなくちゃっ!」


 咄嗟に体が動いて、悲鳴の聞こえた方へ走った。


 そして、声の元へ辿り着いた。そこには、大きなレッドボアがいた。


 女性が1人で倒れ、その1メートルほど離れたところに腹を空かせて苛立っている、今にも女性にかぶりつきそうなレッドボアが構えている。

 足を怪我しているのだろう。

 ザッと女性の後ろに立ち、魔法を使おうと構える。その時、大切なことを思い出した。

 

 私は...魔法を使ったことが一度もない!!!


 落ち着け私。確か魔力を指先にため、イメージして、一気に放つ!


 「ファイヤーボール!!!!」


 その瞬間、ゴオッと凄まじい炎が現れレッドボアに直撃した。

 

 ドゴゴォン!


 「えっ、ちょっ、強すぎた!!」


 煙が消えた後、レッドボアのいたところを見ると、見たこともない焼き豚が転がっていた。


 「あ、あのっ」


 振り返るとさっきの女性が涙を浮かべてこちらを見ていた。

 あ、絶対に怖がられている...


 「えと、大丈夫ですか?怖がらせてすみません。魔法は初めてなものでして。」

 

 「?!初めてであれですか。もしかしてあなた、アイリス様では?」


 「はい。アイリスは私ですが...」


 「申し訳ございませんでした!お怪我はありませんか?私のせいで...本当に、ご迷惑をお掛けしました!」


 「ちょっと待って。いいよ。私身分とか気にしないし。そういうのはもう、疲れたから。」


 「で、では。まず本当にありがとうございました。恩返しをしたいので、ぜひ私の村に来ていただけませんか。」


 村...


 「行く!!!」




 

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