第60話 虐めないで
事業部長主催でハード・ファーム全課員が集められて会議が行われた。
いったい何をと訝しむ皆の前で事業部長がいきなり話し始めた。
「研究所を虐めるのはいい加減にして欲しい」
全員呆気にとられた。
思わず手を挙げてしまった。
「事業部長。虐められているのはこちらです」
俺の言うことに文句があるのかとでもばかりに睨まれた。それでも私の口は止まらない。
「研究所にクレームをつけるとブラックリストに載ることはご存じですか?
研究所のチップを押しつけられますがマニュアルを頂けないのはご存じですか?
マニュアルを貰うのに土下座しないといけないのはご存じですか?
製品に使えないレベルのドライバを押しつけて来て中を見るなと言われるのはご存じですか?
それを使うと製品などとは言えないものができあがることはご存じですか?
バグが一杯入っていて製品がフリーズするのはご存じですか?」
今まで溜めて来た不満を全部ぶちまける。
事業部長はへらへらと笑って、すべて無視した。
「とりあえず、研究所を虐めるのは止めるように」
事業部長は話を締めくくって解散を命じる。
これはもう駄目だと断じた。
ファームが悪いの大合唱の中ではファームからの申告など誰も取り上げない。
家が火事になっているのに、周囲の人間がそれを完全に無視しているのだ。それどころか家は火事になっていませんと事業部長が断じたに等しい。こうなればもはや火事を止めるすべはない。
上の人間は全部が仲良しお遊戯クラブの会員なのだ。この人たちはその結果会社がどうなろうがどうでもいいのだ。
会社ごっこ。そして管理職は取り巻きも含めてみんなで楽しくお遊戯をしている。
これに呆れたH氏がやって来ると、一緒に会社を辞めないかと告げて来た。
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