第58話 友達鳥
外注を雇う予算が余ったという話で、会社に友達鳥を紹介する。
フルリモートで通信フォーマットの社外用マニュアル作りをやって貰うことにする。
本来正しい仕事の手順としてはこのような文書はテクニカルライターという職業の人が行う。技術的な話を一般人でも理解できるように整理して書くのが仕事だ。
だが大概の現場では技術者本人がマニュアルを書いたり、あるいは職場で一番できない人間が書くことになる。その結果、何ともひどいマニュアルや説明書が市場に氾濫することになってしまう。
この点、日本の会社というものはプロの仕事というものを余りにも軽く見る傾向がある。
その結果として今の衰え切った日本が存在する。
友達鳥はこの会社に入る前にネットで知り合った女性だ。
ゲーム仲間であり、もちろん恋愛関係はまったくない。とくに友達鳥に優れたところはないから、これはあくまでも友達に仕事の一部を渡して儲けさせてあげようと言う義侠心からである。
会社に来て貰い、契約を行う。
彼女を見た昼ギツネ課長が『にへら』とばかりに厭らしい笑みを浮かべる。何を考えているのか丸わかりである。
もちろんそういう考えしかできないこの課長はゲスである。なんでも下半身に結び付ける人間は私は大嫌いである。
友達鳥というものは肩の上に止まると友達友達と叫びながら他人様の懐の金をついばむ、いわば集り屋である。
長いつきあいだ。友達鳥がろくでもない人間であることは私にも分かっていたが、それでも一度友達と呼んだ人間には私は誠意を尽くす。
誇りとは本来は死ぬほどの苦労をして維持するものだから。
今から思えば、実に無駄な行為だった。
友達鳥が食い散らかしたお金があれば、この先にある地獄がもう少しは楽になったであろう。
もちろん後悔とは手遅れになってからするものである。
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