第26話 皆でお遊戯

 営業の人と話す機会があった。

「あいつら汚いんだよ」

 あいつらとは後追いでプラズマディスプレイを売り出したN社である。

 N社の売り込みパンフレットは我が社のパンフレットをそのままコピーし、社名の部分だけを自社のロゴに入れ替えたものという話である。

 導入実績の部分も当社のものをそのまま使っている。

 それを使って売り込みをかけているのだ。こちらが成功すればするほど、それはN社の手柄として認知される。


 生き馬の目を抜くようなという表現よりは、詐欺そのものである。



 画面デザインや操作方法についてデザイン部へ依頼できないかと話を回す。

 なんだこの会社にもデザイン部があるんだ。

 しばらく経って返答が来た。

「デザインが二種類あります。どちらがいいか決めたいので二つとも作って使って決めたいと」

 お前は小学生かと喉元まで言葉が出た。出来上がったものを見て決めるなら子供でもできる。想像の内で良いものを決められないでデザインなんかやるな。この間抜け。

 にこやかな笑みと共にこう返す。

「一つ作るのに約五百万円かかります」

 向こうは要求を慌てて引っ込めた。

 誇張ではない。一つ作るのに私で一週間かかる。私は月に二千万円分のコードを書くので一週間で五百万円かかることになる。

 あまりに驚いたのか結局デザイン案は出てこず、こちらで勝手に作って終わった。

 依頼一つこなせない。本当に役立たずな部署だった。

 『できません』から『なにもやりません』を許す部長課長も変だった。

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