第96話 払ってもらいまっか?



 この俺、グレンと「竜撃パーティ」がワイネア王国を旅立ってから数日が経過する。

 途中とある小国で冒険者ギルド立ち寄った。


 何故かギルド内は騒然となっている。

 なんでも魔物が住み着いた洞窟に、プラント・イーターという植物系の強力な魔物がボスとして住み着いているらしい。


「……なんでもよぉ、第四級冒険者のユウジンが仕切るパーティが全滅したらしいぜ」


 併設する酒場で冒険者の男が教えてくれる。


「プラント・イーターか……魔力制御が得意で、あえて弱く見せ油断を差そう魔物だったな。第四級じゃ無謀な相手だ。どうしてそのパーティに討伐を依頼したんだ? 明らかにギルド側のミスだろ?」


「いいや、そうも言い切れねぇよ。依頼者クライアントの騎士団長が体裁を保つため、あえて伏せていたらしい。理由は冒険者ギルドに依頼する前に潜入した騎士団の部隊が壊滅させられたからだそうだ」


「それで手に負えなくなり冒険者ギルドに依頼を……そりゃ迷惑な話だ」


「まぁな。けど国が相手だ。ギルドマスターも強く訴えられず頭を抱えているらしい。そういや全滅と話したけど、一人生き残った冒険者がいたな……あいつなんていったっけ?」


「イキトさんですよ」


 通りかかった受付嬢が答えてくれる。


「イキト?」


「ええ剣士職から雑用係に転職チェンジされた方です。剣士としてはダメダメでしたけど、魔力探知は目を見張る方でした。リーダーのユウジンさんも、彼の忠告をきちんと聞いてくれれば……はぁ」


 なんでも、そのユウジンとパーティ連中は日頃からイキトを蔑ろにして時に暴力を振るっていたとか。

 最低だな。

 だから雑用係は不遇職とか言われるんだ。


 俺は「なるほどね」と相槌を打ち、カウンターに向い入手した素材の換金をしてもらう。


 ――魔王軍、最強幹部にして七厄災の一人、雹炎のヘルディンの両角だ。


 他、ここの来るまで斃した魔物達の素材もある。


 俺が提示すると、対応した受付嬢は「ええ!?」と驚いていた。

 一応受け取ってもらい審査されている。


 間もなくして、受付嬢でなく何故かギルドマスターが現れた。

 厳つい風貌のおっさんだ。

 

「――あの魔族の角。あんたが斃したのか? 名はグレン……第三級の雑用係となっているが?」


「ああそうだけど何か問題でも?」


「いや、何一つ問題はない……まさか、あんたが今話題の『竜撃パーティ』の一人か?」


「そうだ。仲間は外で待たせてある。育ちの良い彼女達はこういう所は苦手だからな」


 それに換金だけの目的だから、雑用係の俺一人で十分だ。

 だがそれを聞いたギルドマスターの目の色が変わる。


「な、なぁ、あんたら竜撃パーティでダンジョンのボス、プラント・イーターを斃してくれないか? 礼は弾む、だから頼む!」


「ん? あ、ああ……確か30階層の洞窟だったな。3時間あれば十分だろう」


「ガチか! いや助かるよぉ!」


 ギルドマスターは隆起した両腕で俺の手を握りブンブンと振り回す。


「わまったから離してくれ。それより換金の方は?」


「ああ、そうだったな……凄ぇ金額だぞ。ここじゃ渡せねぇから別室に来てくれ。ついでにクエストの詳細を説明する」


 それからアムティア達を呼び出し、ギルドマスターと別室に向かう。

 既にテーブルに報酬金が置かれており、大量の金貨が重ねられていた。


 ざっと見積盛って、10億Gか。

 やっぱ魔竜並みの価値があったようだ。


 これを全部抱えている糞借金の返済に当て、今回のクエストで路銀としようと考える。


 その後、ギルドマスターから新たなクエストの依頼を受け、潜入するダンジョンの場所や討伐対象のプラント・イーターについて訊いた。

 明日、クエストに挑むことにする。

 


 冒険者ギルドを出ると、例の借金取りこと小人妖精リトルフ族の少女ルカが偉そうに腕を組んで待っていた。


「ほな、グレンはん。今週分、払ってもらいまっか?」


 相変わらず胡散臭い関西弁風の口調だ。

 

「わかったよ、ほら」


 俺は10億Gが入った大入袋を、ルカに手渡した。

 彼女は自分が所持する大入袋に入れると、しゅっと大金が消えてしまう。

 あの袋、魔法で圧縮できる仕組みか?


「しめて10億Gや。今回ぎょうさん稼いではるやん」


「事情は知っているだろ? そういや、ルカは盗賊職シーフだったな?」


「せやで」


「だったら明日、俺達と一緒にダンジョンに潜らないか?」



―――――――――――


お読み頂きありがとうございます!

「面白い!」「続きが気になる!」と言う方は、★★★とフォローで応援してくれると嬉しいです!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る