第89話 落ちぶれたイクトさん
イクトside
僕の名はイクト。
『
だけど今じゃ路銀が底を尽きてしまい、とある小国の冒険者ギルドで稼がなきゃいけない事態となった。
仕方ないので急造パーティに一時加入して働いている。
え? 奴隷にしたユナはどうしたって?
あの子は宿泊先の馬小屋で待機し、アルバイトを探している最中だ。
なんだかんだ労働意欲のある子だからね。
それはそうと僕は今、凄く頭に来ているんだ。
何故なら……。
「――イキト、お前いい加減にしろよ!」
冒険者ギルドにて。
リーダーの戦士ユウジンが僕の胸ぐらを掴んでくる。
「僕ぅ、何かやっちゃいました?」
「何できねぇからキレているんだろうが! 俺と同じ前衛の癖によぉ! 何、魔物相手にイモ引いているんだぁ、コラァ!」
そう僕はパーティでは剣士として、このユウジンと共に前衛を担っている。
このリーダーは四級冒険者だが、僕は未だ七級の初心者扱いだ。
急造パーティ故に頭数を揃えるという形で、ペーペーでも入れてもらうことができたんだけど……。
ここの魔物はやたら強いったらありゃしない。
いや以前の僕なら瞬殺だったんだけどね。
それでもダンジョンとかに住み着く魔物でも、中級冒険者パーティでなんとか戦えるレベルの猛者ばかりだ。
ユウジンを含む他のパーティも四級から五級冒険者達ばかりなので連携し合えば、まだなんとか戦える程度だろうか。
しかし奴が主張するには、前衛の僕が足を引っ張っているらしく、そのせいで1階層しか探索できないと訴えている。
だから僕に鬱憤が向けられているようなのだ。
「僕にだって色々あってね。普段は力をセーブしているのさ……」
「その言葉を信じた結果がこれじゃねーか! 七級冒険者の癖に、さも『只者じゃない』感でイキリながら話しかけてくるからよぉ、つい間に受けちまったが……訂正するぞ。お前は初心者以下の無能者だ!」
ユウジンが吐き捨てた言葉に、奴の背後で立つ仲間達も「そうだ!」とか「全部、あんたのせいだからね!」など責め立ててくる。
パーティ共も嘲笑するならテンプレだが、本気でブチギレているのが伺えた。
酷ぇ……あんまりだ。
嘗ての日本じゃ、僕はクラスの人気者だったのに……。
そりゃ、低級魔物のゴブリンを相手に戦わず逃げたのは事実だ。
しかも奴ら全員が冒険者から奪った武装をしているわ、やたらとマッチョで明らかやばいと思った。
明らかに僕が道中で戦っていた魔物達とは異なる存在であり、その全身から溢れる魔力を見ただけでも強さがわかってしまう。
さほど訓練を受けていない(アムティアに指導を受けるも、ほぼサボっていたため)、僕の剣技じゃ太刀打ちできる筈がない。
なのになんでもかんでも僕のせいにしやがって……糞共が!
魔法さえ使えれば、こんなしょぼい傲慢パーティなんぞに入らなくて済むのに!
しかし、ここでブチギレたら僕の負けだ。
ラノベ知識では、こういう場面では被害者ぶる必要がある。
僕だって一生懸命にやっているんだぞオーラを見せなければならない。
「ごめんよ、ユウジン。今回は僕が悪かった……次こそ頑張るよ」
「今回ばかりじゃねぇって話だよな? お前がイモ引いたの一度や二度じゃねーぞ! あと次があればな!」
それからも、ユウジンと仲間達から延々と愚痴を言われ解散となった。
無料で宿泊させてもらっている馬小屋に戻ると、奴隷少女のユナが出迎えてくれる。
「イクト様、お帰りなさい。ねぇ聞いて、私バイト先が決まったんです!」
そう声を弾ませ報告してくる。
なんでもこの国で有名な飲食店のウェイトレスだとか。
おまけに素質があると期待され、前金まで頂いている。
だからか今日の夕食は普段より少しだけ贅沢だった。
「うん、それは良かったね……(てかご主人様の僕より凄くね?)」
それでもユナは健気に頑張って役に立ってくれている。
エッチなことはさせてくれないけどね……。
彼女に施した呪術具の首輪もそういった内容の指示はできない縛りがある。
ユナ自身もあれから肉付きがよくなり、元々顔立ちも良かっただけにエロゲームやラノベっぽい美少女が出てきて良い感じだ。
けど、やっぱ胸が残念だけどね……おっとそれを言うとブチギレられるから禁句だ。
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