第87話 みんなボロボロじゃん
「グレン師匠、ご無事ですか!?」
「敵の大将はやっつけたニャ、グレン!?」
ヘルディンとの戦闘後、アムティアとパルシャが扉を開けて駆けつけて来た。
二人とも既にリフィナによって傷が回復されているようだが、身に纏う衣服と装備には破損と血痕が見られている。
「ああ、問題ない。見ての通りだ――」
俺は右手にヘルディンが残した両角を見せた。
「流石は我が師……ですが、その左腕は?」
「死闘の末というやつさ。戦える時間を考慮した上での尊い犠牲だ」
何せ3分間しか戦えない身だ。
制限時間さえなければ、こんな戦い方などしない。
「うにゃ、グレン……痛そうだニャ」
「痛みには慣れている。それより、エアル姉さんとリフィナは?」
「はい、エアル殿も無事です。リフィナが傷の回復をしております」
「そうか……リフィナには感謝だな」
竜撃パーティになくてはならない存在だろう。
「グレンくん、終わったのね。あんまり心配してなかったけど、思ったより負傷大きいわね?」
治療を終えたエアルウェンが近づいて来る。
なんでも魔力切れを起こして、しばらく動けなかったとか。
彼女も全身に魔力弾を受けた痕が見られ、相当な死闘を演じたことを物語っていた。
「七厄災、思った以上の実力だったよ」
「……グレン、大丈夫ぅ?」
リフィナが、エアルウェンの背後でちょこんと顔を覗かせる。
三人を回復させた疲労からか、少し顔色が悪そうだ。
「ああ、問題ない。魔力が回復してからでいいから治癒してくれないか?」
俺の要望に、リフィナが首をぶんぶんと横に振るう。
「……今すぐ治す。グレンのためだもん」
そう言うと俺にしがみつき、左腕の火傷から癒し始める。
こんな小さな身体に負担を掛けてしまったな。
けどおかげで無事に動かせるようになった。
「ありがとう、リフィナ。後は自分の回復に専念してくれ」
「……グレンが頭なでなでしてくれたら、すぐ回復するよ」
「そっか……わかったよ」
俺は回復した左手でリフィナの頭を優しく撫でる。
半分は父親代わりとはいえ、懐かれたもんだと思いながら。
リフィナも「えへへへ」と微笑み喜んでいた。
それからジャンナ達と合流し、ヘルディンを斃したことを伝えて戦いは完全に終結する。
レジスタンスを含む、人族の民達から歓声が上がり俺達の勝利で幕を閉じた。
「――黄金鉢のアーク? 知らんな……魔族達のことは疎くてすまない」
落ち着いた頃合いを見て、ジャンナに訊いてみた。
他の者達も同様の反応だ。
戦いを終えたばかりとて、俺達『竜撃パーティ』はそう浮かれてはいられない。
次なる目的があるからだ。
そのアークという魔族から、『魔王の導き手』となる者の情報を聞き出すこと――。
話では、1000年以上も生きた魔族であり、新たな魔王を導き魔王軍や残党の魔族を統率する陰の立役者らしいのだ。
したがって、『魔王の導き手』を探すのが唯一魔王への近道となる。
そして七厄災のリーダー格、『黄金鉢のアーク』がそいつの詳細を知っているようだ。
「わかった。ありがとう、ジャンナ」
「いや礼を言うのはこちらの方だ、グレン殿……まさか其方が、あの陰の英雄と称えられる竜戦士であったとは……色々とすまなかった」
「いや、グレンでいい。今は少し戦えるようになった雑用係だ」
「……そうか。なら改めて礼を言おう。竜撃パーティの皆も、本当にありがとう。この恩は一生懸けて必ず返そう」
その後、俺達は体力の回復と装備を整えるため三日ほど滞在することにる。
流石に今のワイネア国から討伐の報酬は頂けないので、回収した魔族達の角でその代金とするかパーティ達と相談した。
一番は魔法を採取するエアルウェンに対してだけど……。
「――アムちゃんにグレンくん、今回は血祭り衆の角だけもらっていい?」
「私は構いません、エアル殿」
「俺もいいけど、ヘルディンの角はどうする?」
「売っていいわ。《
まぁエアルウェンが言うならヘルディンの角はギルドで換金してもらうか。
何せ最高幹部の角だからな。
もしかしたら魔竜並み(時価10億G)で売れるかな?
―――――――――――
お読み頂きありがとうございます!
「面白い!」「続きが気になる!」と言う方は、★★★とフォローで応援してくれると嬉しいです!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます