第72話 血祭り衆って何よ?
俺の問いにジャンナは「うむ」と首肯する。
「ヘルディンに仕える側近の魔族だ。三名いる……どいつもヘルディンに次ぐ強力な魔法を操るバケモノだ」
「なるほどね……連中が乗っ取った城の内部や構造など知りたいんだけど、王女のジャンナならわかるだろ?」
「ああ、勿論熟知している。それでグレン、どうするつもりだ?」
「直接、城に乗り込んで一気に潰す。タイマン戦に持ち込みさえすれば負けることはない。だから、ジャンナ達レジスタンスには城外で可能な限り騒ぎを起こし、魔族と魔物達を引き付けてほしい。ワザとらしくて構わない」
「それは問題ないが意図を聞かせてほしい」
「俺が知るヘルディンという魔族なら、城内の全勢力を費やし阻止に当たるだろう……念のため『血祭り衆』だけを待機させてね」
「何故そう言い切れる?」
「ヘルディンは確かに強く実力のある魔族だが、同時に
元勇者パーティで例えるなら、シジンに近い思考だろうか。
まぁあ、の変態魔法士ほどズル賢くないけどね……。
俺の話に、ジャンナは真っすぐ見つめながら首肯する。
「わかった。グレンと竜撃パーティを信じよう」
かくして三日後、行動に移すことになる。
◇◆◇
決行日――。
ジャンナは散らばったレジスタンスを集め、騒ぎを起こした。
家畜以下の扱いを受けていた自国の民達を解放し、武器を取らせ共に暴動を起こし始める
その数は1000人を優に超え、大半の魔族兵と魔物兵が対応に追われてしまった。
また城で潜伏しているレジスタンス達の情報操作により、城内でも騒然となる。
「暴動だと!?」
「レジスタンスが家畜(人族)を解放して、貴重な食料を強奪しているそうだ!」
「クソォ! 魔物兵は何をやっている!? あの低能共め、まともに監視もできないのか!?」
ついには
その頃、俺ら竜撃パーティはジャンナから教えられた脱出用の地下水道を通って城内へと潜入する。
大きな石柱に身を潜めながら、魔族達の慌てふためく様子を観察していた。
「残った、あいつらが『血祭り衆』だな……」
俺は『玉座の間』に立つ、三人の魔族らを観察する。
真ん中に立つのは女の魔族。
確か『刃のモウリエ』という通り名だとか。
華やかなドレスを纏う貴婦人のような身形だ。
容姿も非常に整っており、丁寧に編み込まれた髪の頭部には魔族を象徴する二本の角が生えている。
その右側には巨漢の男魔族が立っている。
筋肉隆々で厳つく、両目は何故か包帯でぐるぐる巻きに覆われていた。
頭部に生えている両角は闘牛を彷彿させ、背には身の丈ほどの刃を持つ大剣が装備されている。
名は『心眼のマウルス』だと聞く。
最後に左側に立つ、可愛らしく眼鏡をかけた少年の姿をした魔族だ。
『必中のワンタト』と呼ばれ、その特殊な魔法を操ることからヘルディンのお気に入りだと言う。
小柄な体に
「あの魔族達が護る奥部屋に、ヘルディンが待機しているのですね?」
アムティアが小声で訊いてくる。
「ああ、間違いない。ヘルディンの《
「つまりヘルディン自らが出陣することはないってわけね?」
エアルウェンの問いに、俺は首肯して見せる。
「その通りだ。普段なら家畜以下の軽んじられる人族でも、今じゃ国を支える貴重な労働力だ。騒ぎを起こしているレジスタンスや民達も可能な限り生け捕りするよう指示している筈だろう」
ただ滅ぼして支配すればいいわけじゃない。
占領した国や土地を維持してこその征服だからな。
ヘルディンもそこ学び、やばいと思って運営方針を変えたに違いない。
その時だ。
マウルスという巨漢の魔族が掌を翳した。
そこから単眼の目玉を複数ほど出現させ、浮遊しながら周辺を回り始める。
(なんだ、あの目玉は? 気色悪い……)
などと思っていると、
「何奴だ!?」
いつの間にか目玉の一つと目を合わせてしまっていた。
―――――――――――
お読み頂きありがとうございます!
「面白い!」「続きが気になる!」と言う方は、★★★とフォローで応援してくれると嬉しいです!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます