第71話 レジスタンスのリーダー



「うにゃ、グレン?」


 俺の呼びかけに、パルシャはぴたっと攻撃を止める。

 師匠のギムルに言われたのか、俺の言うことは割と聞き入れる獣人娘だ。


 女リーダーも含め周囲のレジスタンスから安堵の溜息が漏れる。


 並ばされていた俺とアムティアとエアルウェンの三人は立ち上がり、奴隷と商人の衣装を脱ぎ捨てた。


「そのパルシャが言う通り、俺達は竜撃パーティという冒険者だ。『雹炎ひょうえんのヘルディン』を斃すため、フォルセア王国から任命されてやって来た」


「竜撃パーティ? フォルセア王国で任を受けているのであれば勇者パーティではないか? しかし確か勇者は闇堕ちして追放処分を受けたが、途中で魔族に殺されたと聞く」


 女リーダーが言う通り、巷でもイクトの闇堕ちと死亡説が広まっている。

 勇者を召喚してきたフォルセア王国として、既に歴史に残る恥となっているとか。

 知らんけど。


 俺は率直に頷いて見せる。


「ああ、だから勇者のいないパーティだ。こうして恥を承知で、魔族を狩り続けながら魔王討伐の任に当たっている。この国にもその為に来た」


「……そうか。どうやら目的は一致しているようだ。私はジャンナ・フォン・ワネイア――ここワネイア王国の第三王女だ……が、今はレジスタンスを組織するリーダーだ」


 ジャンナと名乗った女リーダーはフードと布マスクを外して素顔を見せる。

 凛とした美貌を持つ気品あふれた素顔。赤みを帯びた長い艶髪を靡かせている。

 年齢は20代くらいだろうか。


「まさか王族に生き残りがいたとはな……」


「私が最後だ。父や母、兄や姉も既に殺され今も王城付近で無惨に晒されている……今はこうして生き残った兵を束ねて力を蓄えているところだ。と言っても、その日の食い扶持を集めるので精一杯だけどな……情けない」


 まぁ敵の補給と備蓄攻めるのも戦術だけどな。

 けど国に仕えている兵士達がヒャッハーするのは、あまりにも品がないというものだ。

 特に王族のあんたが統率するなら尚更だぞ。


 っと言ってやりたいが、他国の問題なのでやめておこう。

 寧ろ相手は王族だけに礼節で接する必要がある。


 俺はジャンナの前で一礼して見せた。


「これほどの強固な結界です。外に出ることもままならないでしょうし仕方ないですよ。それよりも、よく生き残られ潜伏を続けておられる……ジャンナ王女、レジスタンスはどれほどおられるのです?」


「グレン殿と言ったな。有難いのですが、今の私に敬称と礼節は不要です。国を魔族に奪われてしまい今では肩書上なので、どうか楽にお話ください。私も王女といっても武人肌が強く、その方が楽だ」


 なるほど、姫騎士アムティアと同じタイプの王女様か。


「わかりました。いえ、わかったよ」


「では問いに答えるとしよう――ここにいるのは30人程度だが、搔き集めれば200人は超える。バラバラで活動しているのは、一箇所に固まっていたら逆に足取りを掴まれてしまうからだ」


「200人か……俺達に協力してくれるなら、こちらで雹炎ひょうえんのヘルディンを斃し、貴女達にこのワネイアを返還させてみせると約束するよ」


「グレン殿と言ったな? 貴方は一体何者なのだ?」


「殿は不要だよ、ジャンナ。まぁ少し戦える、雑用係ってところかな」


「……そうか、わかった。是非に協力させてほしい」


 こうして俺達はジャンナ達を味方につけた。



 それから彼女達の案内でレジスタンスこと残党軍のアジトへと招かれる。


 彼女達はずっと地下に潜伏していた。

 また他の残党兵は一般の民に扮したり、労働者として普通に働いているようだ。


 残党兵の中には魔族達が支配する城で雇われている者もいるとか。

 今回、俺達を襲った経緯といい主な情報源も彼らからの内通によるものだ。


 そして皆、ジャンナの一声で行動を移すため虎視眈々と機を伺っているらしい。


 丁重に招かれた俺達は食事の提供を受け、ジャンナから話を聞くことにした。

 といっても、この食料は全て俺達が持っていたやつだけどな。


「先程も言ったが、今の我らでは『雹炎ひょうえんのヘルディン』は疎か、『血祭り衆』にすら敵わず成す術がない……こうして生き残ったものの、正直途方にくれている」


「血祭り衆? なんだそれは?」



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