第70話 ヒャッハー!なレジスタンス



 にしても先程から魔族の様子が可笑しい。

 まるで何かを警戒しているように感じられる。


「それより、いいか! この辺には『レジスタンス』が出没する! 貴様ら商人も気を引き締めろよ!」


「レジスタンスとは?」


「ワネイア王国軍の残党だ。我らに敗戦してから、今もこの国内で散らばりどこかに潜伏している。時折、食料目当てに我らが招いた商人を襲っている」


 マジかよ……軍の生き残りがいるのか。

 しかし話を聞く限り、抵抗軍と言うより賊と化しているようだ。


 だが上手く接触すれば案外……。



 ヒュン



 空気を裂き何かが飛来する音。


「ぐえっ!?」


 護衛の魔族一人がその場に倒れた。

 首に矢が刺さっている。明らかに致命傷だ。


「クソッ、現れたか!?」


 魔族兵が荷馬車を中心に円陣を組む中、左右から顔を布で隠し武装したマント姿の人族達が挟撃してくる。


「ヒャッハー!」


「食料をよこせぇ!」


「魔族共は皆殺しだぁ!」


 あれがレジスタンスなのだろうか?

 どいつも「ヒャッハー」「ホホホーッ」とか叫んで超ガラが悪い。

 国が崩壊することで暴力が支配する時代になったのだろうか?


「レジスタンめ! 貴重な食料を奪わせないぞ!」


「奴隷と商人を命懸けで守れ!」


「傍若無人共め! 許さないぞ!」


 あれ? 可笑しいぞ。

 魔族の方が品性に溢れ真っ当なこと言っているように聞こえてしまう。

 宿敵相手とはいえ、襲われる側として勘違いしてしまいそうだ。


 魔族兵は槍を構え抵抗するも、レジスタンス達はざっと見て30人はいる。

 特に強い魔法も持ってなく、多勢に無勢で押し切られて全滅してしまった。


「よし! 残るは商人と奴隷だ! 引きずり降ろせぇ、ホッホゥゥゥ!」


 悪党の如く歓喜の声を上げるレジスタンス達。

 あまりにも品格の無さに、つい斃したくなるがここは我慢だ。

 一応、ポジ的には味方の筈だからな。


 商人姿のアムティアとエアルウェンも両手を上げ降伏をアピールする。

 本来の気性なら真っ先にブチギレてしまう二人だが、俺が背後で「我慢してくれ」と囁き従ってくれていた。


 そして荷台にいる俺もレジスタンス達に引きずり降ろされ、アムティア達と隣に並べるように座らされてしまう。

 このまま危害を加えるようなら戦うしかないと、二人に向けて目で合図した。


「いいか、商人は殺すな! あと奴隷もだ! 我らの敵はあくまで魔族のみだからな!」


 リーダー格らしき者が大声でそう指示してきた。

 女性の声だ。口調もどこかアムティアに似ている。


 あくまで目的は食料の強奪らしい。

 俺達に危害を加えないのなら交渉の余地はあるか。


 そう思っていた時だ――。


「ジャンナ様! 積み荷の中に、人族と獣人族の少女が二人紛れこんでおりま――ぐわぁ!」


 報告してきた一人が、突如荷台から勢いよく落ちていく。

 続いて、もう一人二人と全員が悲鳴を上げて吹き飛んだ。


 そして荷台から戦斧を肩に担いで降り降りて来る、獅子獣人族ライオットの少女。


「バレちゃ仕方ないニャッ! お前ら全員ブチのめしてやるから覚悟するニャーッ!」


 パルシャが戦斧を振り回し大地に向けて刃を叩きつける。

 激しい地響きと揺れと共に一部が陥没した。


 その凄まじい威力に、レジスタンス全員が「嘘だろ……」ドン引きする。


「ち、ちょっと待て! 貴様らは魔族側なのか!?」


 女リーダーが訊いてくる。


「違うニャ! パル達は魔族を斃すため潜入した竜撃パーティだニャッ!」


 堂々とぶちゃける、知能デバフが天然にかかったパルシャ。

 だがその返答が功を奏したのか。


「魔族を斃すだと……では敵ではないではないか! 聞いてくれ、我らは――」


「問答無用ニャッ!」


 女リーダーの言葉を遮り、パルシャは戦斧を振り上げる。

 すっかり敵だと思い込んでいるようだ。

 奴らのヒャッハーな振る舞いから、そう思われても仕方ないけどな。


 けど敵を誤認しているのは確かだ。

 ここは仲間の誰かが止めなきゃならない。


「やめろ、パルシャ! 一度、刃を引くんだ!」


 誰も止める気配がなさそうなので、結局俺が制止を呼びかけた。



―――――――――――


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