第68話 そっちパターン?
「では師匠、私達の誰かが生贄に扮して敵を油断させればいいんですね?」
アムティアは何故かやる気満々だ。
彼女は生粋のお姫様だけに少々ズレたところがある。
まぁ協力的なところは助かるけどね。
「そういうことだ。俺が奴隷商人のフリをする。アムとエアル姉さんとリフィナが奴隷に扮してほしい」
「うにゃ、グレン……パルは?」
いつの間にか、パルシャがひょっこり現れ訊いてくる。
「パルシャは俺と同じ奴隷商人役としてサポートしてくれ。いいか、絶対に喋るなよ」
パルシャの場合あれだ。
見た目は十分にイケているし魅力的な美少女なのだが、知能がアレだけに速攻で正体がバレそうだからな。
アドリブも苦手そうだし、俺の傍に置いた方が無難だろう。
「わかったニャッ!」
俺の真意を知らないパルシャは元気いっぱいに返答し応じてくれる。
かくして作戦が決定し実行に移すことになった。
なんでも
当初は占領した土地のある物だけでやりくりしていたようだが、歳月を費やすほど自国だけでは困難となっているらしい。
理由は簡単――国を支えるべき人族の民達を蹂躙し、捕食のため殺し続けた結果だ。
せめて労働力の確保として奴隷でも残せば良かったのだが、当時の指揮したヘルディンにそういった配慮が一切なかった。
所詮、魔族は非社会的な害獣であり
いくら人間社会を模倣しようと、力のみが絶対である魔族達がまともな国の運営などできる筈がない。
ましてや繁栄など不可能なことだ。
それに魔王軍とて軍隊である以上、兵士を養う必要がある。
しかも大食漢ばかりの魔物ばかりで編成されていては食糧難に陥ることは明白だ。
結局は蝗害の如く他の国を襲い略奪するしか能がなく、以前戦った「隠密のビャンナ」もそういった経緯でゾルダーナ王国の鉱山で潜伏し軍の準備をしていたと思われる。
そのビャンナも謎の冒険者(竜撃パーティ)達に斃されたことで、『
最近では人族を含む他種族の商人を手厚く受け入れるようになり、特に奴隷を多く欲するようになったと言う。
そのような情報を得て、俺はこの作戦が最も有効だと判断したわけだ。
が、
「――女などいらん! 帰れ!」
「へ?」
二日後、ワネイア王国の検問所にて――。
奴隷商人に扮した俺は、結界を管理する門番の魔族兵から門前払いを受けてしまう。
ちなみに下っ端の魔族兵は
と言っても、こいつらの大半は人族より長く生きている方だ。
魔族は魔力量により成長度が違うらしく、特に力のない魔族は成長と発育が遅く一般人でも容易にキルすることができる。
そんな背景もあり魔王軍では子供の容姿だろうと一兵卒として扱われている。
だが反面、中には意図的に成長を止めている大魔族も存在する。
何故なら連中は知っているからだ。
俺達知的種族にとって、最も不都合な姿であり心理的に大変有効であることを――。
戦場においても、そのなまじ可愛らしい子供の容姿から躊躇なく刃を振るえる者はそうはいない。
特に初見ではその感情につけ込まれてしまい、実力差があるにもかかわらず先手や不意を打たれ簡単に命を落としてしまう種族達もいる。
さらに生まれながら魔力が高く、尚且つ《
まさしく力による隷属。
それが魔族社会の本質だ。
けどまさか、ここまで来て拒否されるとは思わなかった。
「しかし、これほどの上玉は中々いないかと……」
奴隷商人に扮する俺は食らいつき、荷車で待機している奴隷娘に扮するアムティア達を魔族兵達に向けてチラ見させる。
たとえ魔族だろうと、これほどの美少女を前にして心を揺さぶられないわけがない。
だが、
「女はいらんと言っている! 男だ! せめて男をよこせ!」
まるでシジンのようなことを言いやがる。
実はそっちの趣味かこの野郎っと思ったが、どうやら違う意図があるようだ。
なんでも即働ける労働力として奴隷が欲しているのだと言う。
ああ、なるほど見誤った。
そっちパターンだったか……。
―――――――――――
お読み頂きありがとうございます!
「面白い!」「続きが気になる!」と言う方は、★★★とフォローで応援してくれると嬉しいです!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます