第66話 イクト奴隷契約を結ぶ
イクトside
「う~ん。利害は一致しているっぽいけど、なんか思っているのと違う。僕、こう見てもトラウマがあるんだ……嘗て仲間の女子達に散々利用された挙句、裏切られて寝取られたって言う。だから何かしらの縛りがないと、いくら
「一理あります。では少し残酷ですが『呪術具』をお使いになりましょうか?」
「呪術具? 何それ?」
すると、タックは裾から鋼鉄製の首輪を取り出した。
フレーム部分に細かな烙印のような紋章が刻まれている。
「この首輪を身に着けることで、貴方の意に反すると少しずつ首輪が閉まっていく仕組みです。逆らい切ってしまった場合、頭部と胴体がセイグッパイです」
つまり首ちょんぱか。
やべぇ……呪術具だけにエグイ効力だ。
けど良くね?
少なくても僕に暴力を振るうことはない。
「いいね、んじゃそれ頂戴」
「せめて100万G(日本円:100万円)になります」
「高ッ!? その呪術具だけでそんなにするの!?」
「はい。何せレアな呪術具ですので、その代わり五つまでの従属が任意で設定できます」
なんだって?
そりゃ凄い、万能アイテムじゃないか。
「けど高すぎるな……まけてくんない?」
「では、50万Gでどうでしょう?」
「それだと他の奴隷と変わんなくね? そっちだって処分とか困っているわけでしょ?」
「……では10万Gってことで」
「僕ぅタックの良いとこ見てみたいなぁ。こっちは誠意を持って厄介な奴隷を引き取るわけだから、タックも誠意で呪術具を売るべきだと思うのよ~、違う?」
僕の主張に、タックは「う~ん」と首を捻っている。
「……では5万G」
「いや、1万Gだね。回収費用だと思えば妥当じゃね?」
「売る側に回収費とか言われましても……まぁ手に余る奴隷を引き取って頂けるという点ではあながち間違いではないでしょう。わかりました、1万Gでお売りいたします」
「おし交渉成立!」
僕はタックに銀貨三枚(3万G分)を渡す。
「金額が多いですが?」
「初期設定代だよ。任意で設定と言ったって、僕はどう扱えばいいのかわからないからね」
「なるほど確かに……(バカなのか頭がキレるのかようわからん)」
それからタックに僕が希望する五つの設定を施してもらい、奴隷少女に首輪を嵌めた。
「これで、この奴隷は勇者様の物です」
「ありがとう、おかげで良い買い物ができた……と思う」
「ちょっと、最後の『思う』ってやたら間が長いんだけどムカつく――うげぇ!」
早速、呪術具が機能した。
刻まれた首輪の烙印が淡い光を発し、彼女の細い首を絞める。
但し行動をやめると、すぐ元の状態に戻るという仕組みだ。
ちなみに、これら五つの内容を反すると呪術具が作動することになる。
・僕を裏切らないこと
・僕に危害を加えないこと。
・僕に口ごたえしないこと。
・僕を肯定し褒めてくれること。
・たまに甘えさせてくれること。
どうよ、完璧じゃね?
この手のラノベ読んでおいてマジ正解だったわ(ドヤ顔)。
ただ一つ、この呪術具には弱点があるらしい。
それは奴隷自身を傷つける、あるいは命に関わる命令ができないということ。
仮に指示して拒まれて呪術は作動しないとか。
したがって戦闘用でなければ性奴隷向きの呪術具でもないようだ。
まぁ、好条件で購入できたから別にいいさ。
「またのご来店を楽しみにしております」
「ああ機会があれば、また来るよ」
僕は彼女が落ち着いたのを見計らい店から出た。
裏路地を歩きながら、ふとある事が頭に過る。
そういや、あのタックという奴隷商人――。
結構な魔力を秘めていた。
あれでも制御しているっぽかったけど、少なくても商人の魔力とは思えない。
タック……彼は何者なんだ?
「う~ん! シャバの空気うまっ!」
奴隷娘は僕の後ろをついて来ながら背筋を伸ばし外の空気を満喫している。
ガリガリの癖になんか元気だ。
「そういや名前聞いてなかったね?」
「――ユナよ。ご主人様のことなんて呼べばいい?」
「二人っきりの時はイクトで。周りがいるときはイキト……いやご主人様でいいよ」
「そっ。じゃ今は、イクト様だね」
イクト様……おおっ『様』で呼ばれるなんて初めてじゃないか?
なんだか新鮮でいいなぁ。
テンション上がってきたわ~。
「それじゃお金も余ったし、ご飯を食べて身形を整えたら宿屋で一泊して旅に出よう」
「どこへ行くの?」
「――『ジズザン共和国』だよ。僕はそこで新しい力を身に着けるつもりさ」
着々と準備を進めるためにね。
ようやく奴隷っ子も手に入れたし、次のステップに進もう。
そう復讐の準備だ――。
アムティア、エアルウェン、リフィナ。
そして――グレン兄ぃ。
……待ってろよ!
―――――――――――
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