第63話 イクト奴隷を買う
イクトside
サンゾーという謎の文句、いや
色々なクエストをこなしながら旅を続けている。
え? お前、随分と稼ぐんじゃねっだって?
まぁ是非に購入したいモノがあるからね。
その為に貯蓄しているってやつ?
けどいくらクエストをこなしても、冒険者としてランクが上がらず七級のままだ。
等級が上がらないと、クエストも安い報酬ばかりなので娼婦館で遊ぶこともできない。
受付嬢からは「パーティを組めば、それだけ難解なクエストに挑めるので等級が上がりやすい」と言われた。
けどぶっちゃけパーティは組みたくない。
前の勇者パーティですら、僕に依存してばかりの体たらくだったからね。
おまけにいくら活躍しようと評価すらしてくれないし、逆に使えない雑用係のおっさんを持ち上げてばかりのブラックぶりだ。
挙句の果てに、その使えないおっさんに婚約者を寝取られしまう始末。
そんなトラウマもあり、他のNPC冒険者なんてポンコツばかりだと懸念してしまう。
これ以上、裏切られ足を引っ張られるのはうんざりだ。
追放系&復讐モノらしく、ロンリーウルフで頑張ろう。
最後に僕が勝つと信じて――。
◇◆◇
――てなことを妄想していたら、目的地である『ロモスチ王国』に着いた。
ラグロン大陸の南に位置する貿易が盛んな港の国だ。
実はこの港から僕が収監される筈だった、『孤島の監獄』へと移送される予定だった。
だからか、奇妙な因果を感じてしまっている。
「……顔バレしたら厄介だ。イキト・モードになろう」
僕は冒険者イキトに扮するため、マスクを装着しフードを被る。
別に指名手配されてないし、ギルドでも僕の死亡説が流れているとはいえ、万一誰かに見つかっても面倒くさい。
芸能人バリにやらないよりやった方がいいって感じの顔バレ対策だ。
とにかくこの国に来た以上、僕にはやらなきゃいけないことがある。
ん? グレン兄ぃ達に復讐するんだろうって?
いや今は無理でしょ……僕、魔法使えないし返り討ちに遭うだけじゃん。
僕は異世界では「愚か者」だのとレッテルを張られているけど、バカじゃないと自負している。
魔法が封じられたままの冴えない剣技だけじゃ、あのメンバーへの復讐は無謀だ。
せめて『ジズザン共和国』で待ってくれるサイゾー爺さんから『
けど、その前に僕にはどうしても果たさなきゃならないことがあるんだ!
そのために、貿易の盛んなこの国に訪れたのだから――。
「よぉぉぉ! 奴隷の子を買お~んっと!」
そう、頭の中ではその事でいっぱいだ。
てかそれしかない。
奴隷の子を情で絆して全肯定人形に育てる。
そこに全力投球だ。
けど肝心の奴隷を売っている店が見つからない。
おいおい、まさかここでもクソゲームーブが発生するのか?
仕方ない、誰かに訊いてみよう。
「ねぇ彼女、奴隷の子ってどこで売っているの?」
むさ苦しい男は嫌なので、町娘風のお姉さんにナンパするノリで声を掛けた。
「知りません! 何ですか唐突に!? どうして私に訊くんですか! バカですか!?」
すると思いっきり怒られてしまう。
また別の女子から「兵隊さん、あそこに変質者がいます!」とチクられ、衛兵に追いかけられてしまった。
クソッ、魔法さえ使えれば全員ブッ飛ばしてやるのに!
無我夢中で逃げまくっていると気づけば裏路地に入っていた。
「奴隷をお探しですかな?」
不意に背後から誰かが声を掛けてくる。
振り向くと、そこに砂漠地帯とかで見られる真っ白な民族衣装に身を包んだ男が立っていた。
頭にはターバンっぽい布を被り、顔も同じ布で隠されている。
背が低く寸胴な体格で腹が突き出ているが種族は不明だ。
「……あんた誰?」
「奴隷商人のタックと申します」
「どうして僕が奴隷を探していると?」
「貴方、ずっと街中の女子に声を掛けていたではありませんか? 見当違いすぎて逆に目立っておりましたぞ」
なんだって?
そうだったのか……どうやらエロ本売り場を女性店員に聞くほど恥ずかしいことだったようだ。
「まぁね……セクシー系お姉さんか、スタイル抜群で胸が大きい美少女の奴隷を探している」
「ハハハ、ご冗談を。んな子いたら、とっくの前に売れてますよ」
奴隷商人のタックに笑われてしまう。
「んじゃどんな奴隷がいるんだよ?」
「ではついて来てください」
そう言われたので、僕はタックについて行くことにした。
―――――――――――
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