第57話 借金取りのルカやで
アムティアside
私はアムティア。
この竜撃パーティのリーダーだ。
ん? リーダーは竜戦士のグレン師匠じゃないのかって?
うむ、私も内心ではそう思っているし、私なんかより適任だと思っている。
だが師匠曰く「俺はリーダーの器じゃない。トップを支える立場だと思っている」と言い、前勇者パーティの延長で私ということになってしまった。
正直、私こそ器じゃない。
それこそ前勇者パーティで立証済みだ。
勇者の『導き手』として、イクトの暴挙を止められなかった。
今でも悔いが残っている……。
いや別に何かすれば、イクトを正しく導けたとは微塵も思っていない。
あの師匠でさえ「奴だけは女神マイファだろうと不可能だ」と匙を投げていたからな。
そもそもというところだ。
私が後悔していることは、イクトのせいで多くの不要な犠牲を出してしまったこと。
もう少し、奴を勇者から解任させておけばあのような事態に発展しなかった筈だ。
そこは今でも悔やまれている。
おかげで父ロイド国王から1000億Gの借金を押し付けられ返済を余儀なくされたが、罰だと思えば仕方ない。
グレン師匠を始め、エアルウェン、リフィナも割り切り共に頑張ってくれている。
新しくパーティ入りした、無関係な斧使いの戦士パルシャには申し訳ないとしか詫びようがない。
その点も含めソルダーナ王国を出た後、グレン師匠からパルシャに説明されていた。
「――っというわけで俺達、竜撃パーティは借金塗れのパーティでもある。唯一の返済方法は魔王を討伐した際の報酬金およそ500億Gと残り半分は高額なクエストをこなしながら少しずつ返済するしかないわけだ。加入したばかりのパルシャには、そのぅ……迷惑をかけてしまうと思う」
「うにゃ、別にいいニャ。それとグレン、500億っていくらニャ? パルの手の指だけじゃなく、足の指で数えられる範囲ニャ?」
「……いや、それじゃ到底数えられない数だと思う(アホの子だけど憎めね~)」
どうもパルシャは状況を飲み込めてない様子だ。
ある意味、「とんだハズレパーティだニャ!」と不満をブチ撒かれず救われているが、純真な子供を騙しているようで心が痛む。
さらに道中、こんな一幕もあった。
「――探したでぇ、竜撃パーティはん!」
とある商人から乗せてもらった荷馬車にて移動中。
突如、猛スピードで追いかけてくる謎の影があった。
ホウシロウという鳥類に分類する移動用の家畜動物だ。
通称「飛べない鳥」と呼ばれ、灰色の体毛に長い首と2本の足が特徴な高速に走る大鳥である。
野生であれば凶刃な魔物すら蹴り殺す立派な魔物だが、人に飼い慣らされれば大人しい気性で馬と同様に専用の鞍や腹帯と手綱などで乗り自在に操作できる。
そのホウシロウの背に跨るのは、
リトルフ族とはエルフとドワーフ同様、妖精族と呼ばれる知的種族であり、見た目は背が低く童顔で愛らしい少年少女のような姿をしている。
その少女も可愛らしい容貌で赤毛の髪にハンチング帽子を被り、丸眼鏡を掛けている。
身形は盗賊職っぽい軽装備で、片手には白布の大入袋が握られフォルセア王国の紋章が縫い込まれていた。
リトルフ族は荷馬車に近き、「よっ」と軽い身のこなしでホウシロウから荷台に飛び移ってくる。
「誰だ、お前?」
「あんさんが陰の英雄こと竜戦士のグレンはんでっか?」
妙な訛りと方言で話してくるリトルフ族だ。
なまじ子供の容姿だけに生意気に見えてしまう
「そうだが、今は少し戦えるようになった雑用係だ」
グレン師匠はどういうわけか雑用係に誇りを持っている。
そのなんでも屋ぶりから不遇職と蔑まれた職業だが、竜戦士以上に人生の半数を捧げているだけに愛着を持っているようだ。
「まぁどうでもええわ。ウチはルカ、ロイド陛下の命令であんたらの借金取り立てに来た使いの者や。名前だけでも覚えたってな~」
「借金取りか……ついに来やがったな」
どうやらルカと名乗るリトルフは、我らから500億Gを取り立てる目的で近づいてきたようだ。
後々知ることになるが、なんでもフォルセア王国を一時騒がせた盗賊らしくヘマをして捕まってしまったが、父ロイドとの司法取引で竜撃パーティ専属の借金取りの任に就いたとか。
父上よ、容赦ありませんな……。
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