第47話 噂の獅子獣人族の少女



 リーダー剣士の名はハンスと言い、四級冒険者だとか。

 他の仲間達も四~五級冒険者で今回のクエストで結成した急造パーティだと説明を受けた。

 

「俺達の仕事は採掘師達を護衛しながら、鉱山に住み着く魔物達を討伐するクエストだ……最初は低級な連中ばかりと高を括り同時進行で問題ないと思っていたんだけど……」


「さっきの口振りだと予想外の魔物が現れた。そんなところか?」


「ああ――グレート・オーガだ」


 グレート・オーガとは、頭部に角の生えた巨漢の人食い鬼オーガの進化系だ。

 より巨体で鋼と化した肉体と圧倒する怪力ぶりから上級魔物扱いとされている。

 したがって、まともに相手できる冒険者は三級以上のパーティが望ましいとか。


「なるほど……それで逃げてきたってわけか。適切な判断だが、護衛していた採掘師達はどうした?」


「二人ほど奴に食われてしまったけど、後は全員逃がすことに成功したよ。おそらく避難所で俺達が来るまで待機していると思う……が」


「が?」


「一人、仲間が取り残されてしまって」


「なんだと!? お前ら仲間を見捨てたってのか!?」


「し、仕方ないだろ! あいつが……あの斧使いの獣人族が、俺は逃げるぞと指示しても一向に逃げようとしないから……あんなバケモノ相手に無謀に戦おうとしやがって! あんなアホに巻き込まれて、俺達だって全滅したかねーよ!」


「勇猛果敢と言えば聞こえが良いけど、少しオツムが足りない子なのよ……あの獅子獣人族ライオットの子」


 女冒険者の言動に、俺は眉を顰める。


「……パルシャっていう斧使いの娘か?」


「ああ、そうだ。あんた、あのアホの知り合いか?」


「いや面識はない……親友の弟子だ。わかった、俺達は先に進みパルシャを救出しよう」


「正気か!? 三級とはいえ雑用係じゃ不可能だ! 仲間だって新人ばっかだろ!?」


 ハンスは「やめとけ!」と必死で止めようとする。

 他のメンバーも「無理よ! 私達でさえ歯が立たなかったんだから!」と呼び掛けていた。


 最初は見くびられていたと思っていたが、どうやら本気で俺達の安否を気遣ってくれている。

 まぁ、いくら高等級でも雑用係はあくまで非戦闘員だからな。

 アムティアも登録上は新米扱いだ。

 無謀と言われても無理はない。


「心配ない。グレート・オーガ如きにびびっていたんじゃ、とても魔王討伐なんて不可能だ」


「魔王討伐だと? あんたらまさか……勇者パーティか?」


「違う、俺達は竜撃パーティだ」


「え? え? な、何それ……?」


 だよな。

 それはロイス国王が勝手につけたネーミングだ。

 他国じゃ、そんな反応になるだろう。


「……なんでもない。それなりに腕に覚えがあるってことだ」


 俺は「それじゃあな」と告げ、アムティア達を引き連れて鉱山に向かった。



 目的地に近づくと洞窟内から激しい金切り音が鳴り響いている。

 いざ内部に侵入すると、血の臭いが鼻腔を刺激した。


「見ろ、そこら中に魔物の死体が転がっている。ゴブリン共のようだ」


 俺は先頭で歩き用意した松明を照らす。

 複数に転がる、緑色の皮膚をしてやせ細った老人のような亡骸がある。

 これがゴブリンだ。


 ちなみに雑用係の中には斥候役を担う者もいる。

 戦闘こそ参加しないだけで、出来ることは何でしなければならない。

 それが雑用係の仕事だ。


「妖魔と呼ばれる低級の魔物ですね……全員が頭部や胴体と一刀両断されております。実に見事な切り口です。師匠、先程の冒険者達でしょうか?」


 アムティアの見解に、俺は「そうだな」と呟く。


「ここまでの斬撃は相当な力と技量を要する……ハンス達じゃ、ここまでのレベルに達してないだろう」


 かなりの手練れ、おそらくギムルに匹敵する剛力だ。

 これがパルシャとう弟子の仕業なら相当実力が高い。

 けど知っている連中が口を揃えて言う、「アホ」ってワードが超気になる……。



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