第46話 何気に失礼じゃね



「わかった、探してみるよ。それでその弟子の名前と特徴は?」


「名はパルシャ。獅子獣人族ライオットで15歳の女だ。オレが昔、愛用していた戦斧を与えてあるから、グレンなら一目見ればわかるだろう……それと待ってろ」


 ギムルは席から立ち上がり、別の部屋に向かった。

 間もなくして戻ってくると、一振りの刀剣を持ってきた。


「――『竜月』だ。魔王城で戦った魔竜の角と牙を製錬し研ぎ澄ませてある。魔力が込められた所謂『魔剣』に分類される刀剣だ。持っていけ」


「魔剣だと? どんな効果が宿っているんだ?」


「斬った敵の精神を一時的に奪う。無論、切れ味も保証しよう。普通に売れば1億Gはくだらん」


 名匠のドワーフが制作したからな。

 確かに刀剣としての価値も相当だろう。


 ではこれ売って借金の一部に……いや、そうじゃないだろ!


 しかし魔剣とはな。

 シジンといい、俺をどんな位置で考えているのやら。


 けど魔力効果は素晴らしい。

 いざとなったら逃走用にも使えそうだ。


 俺はギムルから『竜月』を受け取る。


「ありがたく頂戴するよ。ありがとう」


「うむ、これも昔のよしみだ。今思えば、お前さんと『G戦士コンビ』をしていた時が一番楽しかった」


「ああ、俺も楽しかった……」


「グレン、お前さんはさっき『俺はまだ良い方だと思っている』と言っていたが、オレはそう思わん……ある意味、お前さんが最も過酷な代償を背負い、失ったモノが大きいと思っている。現にナギサはお前さんと――」


「ギムル、それはもう仕方ないことだ。ナギサも全て覚悟した上で、俺を助け庇ってくれた……だからその想いを込めて、この魔王討伐任務は完遂しなければならないと誓っている」


「うむ、こうも早く魔王が出現したとは信じたくないが……今回の旅で、グレンが新たな道を見つけ歩めることを祈っているぞ。お主ら仲間達も、どうかこの男を支えてやってほしい……すぐ何でも一人で背負おうとする悪い癖のある奴だ」


 ギムルは言いながら、アムティア達を一瞥する。


「はい! 私も弟子として師匠に貢献していきたいと誓っております!」


「お姉さんに任せてね。無茶なことはさせないわ」


「……グレンはリフィナ達で守る」


 アムティアを始めとする、エアルウェンとリフィナまで頷き言ってくる。


 は、恥ずかしい……。

 もういい歳のおっさんなのに、手に余る子供になった気分だ。



 俺はギムルに分かれを告げ、そのパルシャという弟子がクエストを行っている鉱山へと向かった。

 なんでも一カ月前から魔物が住み着くようになり、鉱石の発掘が難航しているらしい。



 鉱山の近くまで進むと、遠くから武装した何者かが集団で走ってくる。


 魔族ではない。

 人族と他種族が混じった冒険者四人ほどのパーティだ。


「聞いてねぇ! 聞いてねぇぞ!」


「あんなのと、どう戦えって言うんだ!」


「駄目よ! 私達じゃ到底勝てないわ!」


 ふと冒険者達から、そのような台詞が飛び交い聞こえてくる。


「おい、キミらどうしたんだ?」


 俺が声を掛けると、冒険者達が立ち止まる。


「ぞ、増援か? 今更かよ……」


 リーダーらしき若い剣士が息を切らしながら、俺に言ってきた。


「増援だと? ギルドのこと言っているのか? 確かに俺達は冒険者でもあるが……」


 冒険者同士の礼節に則り、胸元のポケットからギルドカードを見せる。

 アムティア達も習って自分のカードを提示した。


 途端、リーダー剣士と仲間達の表情が曇る。


「あんた、三級冒険者のようだが雑用係だと? 他のパーティ達も七級って……舐めてんのか!?」


 いきなり怒られてしまった。

 なんだってんだよ?


 仲間のパーティ達も「ふざけんなよ!」とか「もうがっかりだわ!」とか好きなように言ってくる。


 何気に失礼じゃね、こいつら?



―――――――――――


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