第45話 アホな弟子の行方
俺は左腕に嵌めた銀色の腕輪を擦る。
シジンが作ってくれた肉体の感覚を奪う呪術具だ。
この腕輪を身に着けていれば、3分間程度は《
ゾルダーナ王国に来るまで、魔物相手に何度か試してみて実証済みだ。
「俺はまだ良い方だと思っている……みんなが協力してくれたおかげで、ごく短時間だが戦えるまでに戻ったからな。だからこそ前衛がもう一人必要だ。俺が戦えなくなった時に頼れる存在……ただでさえ勇者のいないパーティだけに」
おまけにイクトのせいで1年間も無駄にしている。
他五大陸の勇者パーティがどこまで魔王の存在を特定しているかも謎だ。
さらに勇者達が魔王を斃してしまったら、1000億Gの借金が俺達に押し寄せて来る始末。
だからこそ俺達は魔族と対抗できる戦力を整えなければならない。
「そうか、かなりの悪条件だな。手助けしてやりたいのは山々だが、見ての通り今のオレは戦士として役立てそうにない。すまん……」
頭を下げて見せる、ギムル。
豪快で大雑把な性格が多いドワーフ族とは思えない律儀な性格。
だからこそ、俺は彼を気に入り「G戦士コンビ」を結成したんだ。
再結成も少し期待したが無理か……こればかりは仕方ない。
俺は頷き微笑を浮かべる。
「頭を上げてくれ、ギムル。俺も事情をよく知らず押しかけて悪かったよ……それにしても、その右手でよく鍛冶師をやれているな?」
「左手は健在だからな。鍛冶師だけなら片腕でも十分だ。それに日常生活自体に支障はない。このまま静かに余生を送りつもりだ」
「そっか……前から聞きたかったんだけど、ギムルって歳いくつなんだ?」
「悪いがそれは言えん」
「どうして?」
「老いぼれと思われるのが嫌なんだ……聞いたら絶対にドン引く」
「ここに751歳のエルフ姉さんがいるぞ」
「……グレンくん、あとでお話があるわ。うふふふ」
「ごめんよ、エアル姉さん……」
やべぇ、つい地雷を踏むところだった。
エアルウェンはお姉さん扱いされるのは大好きだけど、あまり年齢に触れてしまうと機嫌が悪くなってしまう気質がある。
空気の読まないイクトは「なんだぁ、めちゃババァじゃん」とディスったばかりに地雷を踏み、それ以降はエアルウェンの中で空気扱いとなったんだ。
俺が冷や汗を掻いている中、ギムルは「ああ、そうだ」と呟く。
「――弟子がいるのを忘れていたぞ。オレが唯一戦士として鍛えていた奴だ。算数もできないアホだが、斧使いとしての素質は俺以上だと言い切れる。そいつで良ければ連れて行け」
弟子か。
そういや鍛冶師の弟子ジェイミーもそう言っていっけな。
けど忘れるほどのアホって……どういう弟子だよ?
「そのアホ……いや弟子は今どこに?」
「ここから離れた鉱山で、採掘師達の護衛として魔物を討伐している筈だ。奴は冒険者でもあるからな。他の連中とパーティを組み、討伐クエストに参加している。確か五級冒険者だったかな?」
五級冒険者か。
普通というか評価しづらいな。
冒険者ギルドに登録する冒険者は全員「第一級から第七級」まで等級がつく。
第一級か最上位であり、そこに近づくほどプロとして見られ、より高ランクかつ高報酬のクエストが受けられる仕組みだ。
ただし村人あるいは国が直接冒険者に依頼する際はその限りではない。
けど、わざわざ低等級の冒険者に難解なクエストを依頼する者もいないけどな。
ちなみに俺は三級冒険者だ。
ただし雑用係としてだけど。
だが一応は「竜戦士」の肩書もあるので、ギルド内では第一級冒険者と同等の扱いとして見られている。
アムティアとリフィナは登録したばかりなので七級冒険者で、エアルウェンも
したがって五級冒険者は新米よりちょい上的な等級であり、長く冒険者していれば誰でもなれる位置だ。
だが、このギムルが「斧使いとしての素質は俺以上」と言わしめる程の者。
一緒に戦った身として、つい期待してしまう。
……全盛期のギムルはガチ強かったからな。
魔竜の頭蓋骨だって一撃で粉砕していた怪物みたいなドワーフだった。
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