第32話 この勇者もヤバかった



 1年後。

 魔王出現に伴い、勇者が召喚される。


 ――ナギサ・アマカワという金髪JKギャルが別世界から訪れた。


「ちょい、マイファッチからここで勇者やるように聞いたんだけど~」


 マイファッチって何よ?

 なんかやべぇのが召喚されたぞ。


「その通りです。私はレシュカ、女神マイファに仕える教皇です。隣にいる者は竜戦士グレン、勇者である貴女に付き支援する『導き手』です。魔王討伐に向けて、これからグレンに色々と学ぶのですよ」


 冷静なレシュカ教皇に言われ、ナギサは「あん?」とか言いながら大きな瞳を細め。まじまじっと俺を凝視してくる。


「グレッチねぇ……キミぃ、わりと身長高いねぇ。歳いくつぅ?」


グレン・ ・ ・です。15歳になりますが……それが何か?」


 苦手系な女子なので敬語を使うべきか悩むが、16歳の年上らしいからな。

 一応、勇者でもあるし敬意は必要だろう。


 するとナギサは突然笑い出した。


「きゃは! 今時ロン毛やばぁ、年下に教えられるなんてありえねーっ!」


「はぁ!? ナメんてんのか、ネェちゃん!」


 何なんだ、こいつ!?

 言っとくが人生経験なら、そのまま召喚されたお前なんかより遥かに上だからな!

 こんな頭の悪そうなギャルを俺は導かなきゃならないってのか!?


 ブチギレる俺とキャッキャッと笑うナギサの間に、レシュカ教皇が仲裁に入る。

 年下だがここは大人になり深呼吸を繰り返して冷静になった。



 それからフォルセア王城に行き、ロイス国王と謁見することになる。

 新しき勇者のお披露目及び、これから共に戦う選抜された仲間達との対面が目的だ。


「……其方が勇者ナギサか。まさか女性とはな」


 玉座に座るロイス国王が呟く。

 この頃と16年後も対して容姿は変わらず長い白髭を蓄えている。


 国王の隣には若き頃のクラリス王妃が座っている。

 彼女も美貌がかわらず、今思うと王族は歳をとらない人種なのかと勘繰ってしまう。

 またこの頃から俺は彼女の推しにされており、「やっほ~、グレンく~ん!」と手を振られていた。


「うわっ、リアルサンタだわ。ガチやばぁ」


「おい、ナギサ! 陛下の前だぞ、さっき教えた通り跪け! あとギャル語禁止ッ!」


 この女の『導き手』である俺は鬼の形相で指導する。


 ナギサは「へーい」とか間延びした返事で言う通りにした。

 まだ素直に従う分、そこそこ見込みはあるようだ。

 

 ロイス国王は難色を示しながら「うむ」と頷いた。


「では其方の仲間となるパーティを紹介しよう。皆その筋では選び抜かれた者達ばかりだ。入って参れ――」


 扉が開かれ、三人の男女が入ってくる。


 一人目は、シジン・スロード。

 当時27歳で若き導師と呼ばれていた優秀な魔法士。

 見た目は涼し気な優男なので貴婦人達から人気が高かったが、旅を続ける中で男色家ゲイであることをカミングアウトして俺に迫るようになる。


 二人目は、セイリア・フォン・シルヴァィン。

 フォルセア王国の第二王女にして、レシュカ教皇の弟子でもある回復術士。

 高い回復魔法を操る14歳で、その清楚な美貌から「黄金の聖女」と称えられていた。

 けど母親のクラリス王妃と同様、何故か俺のことが気に入り推しと言ってくる。


 三人目はギムルというドワーフ族で、面頬付きの兜を被る斧使いの戦士だ。

 年齢は不詳だが結構な歳を取っているらしく、ロイス国王に負けないくらいの長髭ぶりだ。

 見た目は寸胴な体格でがっしりとした筋肉隆々、戦士として現役であることが伺えた。

 地味に俺と気が合い、同じ前衛として「G戦士コンビ」を結成することになる。


「どうだ勇者よ。頼もしきパーティだろ?」


「ん~っ、王様ぁ。合コンメンバーにしては、ちょい盛り上がりに欠けるかなぁ」


 ナギサよ。

 お前、何言ってんの?


 まさか勇者パーティを合コンのパーティーと勘違いしているのか?

 てかガチでなんなの、こいつ……。



 それが、俺が最初に思ったナギサの印象だった――。



―――――――――――


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