第28話 ワシのとっておき
「だから今お前に【竜式戦闘術】を教えてやると言っておる。ワシのとっておきじゃぞい」
何、妙なテンションで声弾ませていってやがんだ、このジジィは。
(……いや出来るわけねーだろ。俺、赤ちゃんだし、体を動かすどころかまともに喋れねーし)
「まずは呼吸法を教えよう。赤子とて息はしておるからな、まずはそれをやれ。それで成長を早め、肉体も強化されるじゃろう。その他の技法を教えるのは1年後だ」
(……わかった。それならできそうだ。せっかく生まれ変わったのに死にたくないからな……だが気が変わったとか言って俺を食うなよ)
「食わねーよ。しつこい赤子よのぅ……いや用心深いと褒めてやるべきか。今から鍛えれば10年後には竜戦士になる器を秘めるかもしれん。人族最初のな……これでジェスタ家との約束も守れるわい」
(あんたも何かしら意図がある上か……まぁいいだろう。俺は昔、後輩から借りて読んだラノベ主人公のようなガバガバな男じゃない。受けた恩は可能な範囲で返すつもりだ)
「うむ、気に入ったぞ。お前は今から『グレン』だ。名は『竜の炎』を意味する」
(グレンか……ちょっとカッコイイ名前じゃないか)
「本当ならポチチやタママも良かったんだじゃが……すまん」
(何、申し訳なさそうに謝ってんだよ! グレンでいいよ! 絶対に変更するなよ!)
なんかペットっぽくて嫌だな。
絶対にろくな意味じゃないと思う。
「そう? んじゃグレンでいいな。ワシは『ドラル』じゃ、この世界を守護する竜人族の長にして、9柱の竜戦士を束ねる者。お前はワシの子として引き取ってやるから、これからはダディと呼ぶがよい」
(んじゃジジィでいいや)
「ダディって呼べと言ってるだろ! テメェ耳悪いな!」
こうして俺は竜人族のドラルに引き取られ、竜戦士を目指すため修行に励むことになった。
呼吸法を学び1年後、ドラルが言うように俺は急成長した。
わずか1歳で、その辺を走り回り流暢に言葉を話すことができる。
しかし、そこからさらに困難が待ち受けていたのだ。
竜気の練りを学びながら、戦闘を修練し、実践の戦闘訓練などさせられる。
わずか2歳で成人の竜人族と戦わされた時は、10回以上は死にそうな目に遭った。
おまけに竜人族は強固で強靭な鱗の肉体を持つだけでなく、竜だけに背中には翼を隠し持ってやがる。
もうフィジカルからして差がありすぎた。
流石に空を飛ばれた時は頭にきたので、師匠であるジジィに抗議する。
「ねぇ、ジジィ。もうちょっとプラン立てて俺を育成してくんない? あと褒められて伸びるタイプだからよろしく」
「グレンよ。お前、何上から目線で言ってるの? 生意気じゃね? あとお前、出会った時から何かとワシにはタメ口だよね? 前世でもそんな無礼な奴だったのか?」
「相手にもよる。よく訓練に付き合ってくれるドラゴ兄さんにはちゃんと敬語を使っているぞ。てか親子なんだから普通にタメ口でよくないか?」
「いや、ワシ、ドラゴよりも遥かに偉い長老なんですけど……まぁいい。どうせ『人族の僕には翼がない~、こんなの不公平だぁ!』とか、遠回しに言いたいんじゃろ?」
ずばりその通りだけど言い方よ。
腹立つ性格だから、俺の態度も粗暴になってしまうんだ。
「俺はあんたら竜人族のように身体も頑丈でなければ、口から炎も吐けない。当然、空も飛べないんだ。これから成長するだろうか、それでも竜人族には遠く及ばないと思う」
「グレンよ。そのために竜気を教え
「竜眼? ああ、前に言っていた風水みたいやアレか……物事の動きを予見する力だな?」
「そうじゃ。この世界の大地はあらゆる竜脈が流れておる。竜脈の流れを知る者は、あらゆる吉凶を見極め、最も適切かつ最大の力を発揮するのじゃ。嘗て竜眼を会得した者はごくわずか……現役の竜戦士ですら、誰も身に着けておらん至高の境地じゃ」
なんでも最適解の回避や攻撃など状況により見出し、仲間にも伝達できると言う。
俺の解釈では、戦闘術用の占いみたいな技術だと解釈している。
つまり他人にはない長所を作り、最大限に活かせということか。
まぁビジネスでもそう言われていたし理には適っているよな……。
それにやらなければなない。
出来なければ
「わかったよ、ジジィ。頑張るよ……あと、俺を谷底に突き落としたり、大砲に乗せて砲弾みたいに吹き飛ばすのはやめてくれ。それ修行じゃなくて、もう虐待だから」
「うむ、善処しよう(そういや、人族が繊細な生き物だとつい忘れておったわい。すまんのぅ、グレン)」
こうして竜戦士になるために、俺の修行は続く。
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