第25話 結成、竜撃パーティ!



「……いや、陛下。ちょっと何言っているか、わかんないっすけど」


 ヤバイ……。

 あまりにも無茶ぶりすぎて、思わずタメ口で返してしまった。

 

 だって無理ないだろ。

 いきなり、1000億Gの借金とか言い出したんだぞ。

 

 実際に周囲もそう思っているようで、俺の無礼な言動はスルーされている。

 言われたロイス国王でさえも、しれっと「ふむ」とか言って頷いていた。


「はっきり言えば、イクトの暴走を止められず多くの被害を出してしまった責任だ。フォルセア王国はあくまで立て替えるだけの話だ。これでも勇者特権で割り引いた額だと思え」


 国王が言う勇者特権とは、勇者が魔物討伐や魔王軍との戦闘の際にやむを得ずに自然や町の建物を破壊した際にある程度の損害補償を国が負担する制度だ。

 また各国から賞金や路銀を与えられ、各々の装備代や公共施設が無料になるなど何かと融通が利く。


「しかし父上……今の我らには勇者がおりません。もう勇者特権は適応されないのではありませんか?」


 アムティアの言う通り、これからはそれらを頼らず魔王と魔王城を捜索しなければならない。

 したがって旅の資金や装備代など全て自分らで調達して稼ぐ必要がある。

 その上、1000億Gの借金とかって……あんた鬼か!?


「確かにな。だが其方らには、グレンがいるではないか? 希少職である竜戦士であれば、そこそこ顔が利く筈だ。しかも16年前に魔王にトドメを刺した英雄となれば、少なくても厄災の勇者イクトなどより、各国も見直してくれるだろう」


「かもしれませんが……」


「それにだ。其方らが魔王を討伐すれば、各大国の国々からも報酬金が出るだろう。無論、1000億Gには程遠いが、半分ほど足しになる筈だ。勇者もいないし、逆に其方らの自由にできるだろ? それと冒険者ギルドに登録すれば魔族関連のクエスト行いながら捜索もでき、さらに借金の返済もできる筈だ」


 冒険者ギルドか……王様がそれ言うって感じだが。

 勿論、俺は登録している。

 けど箱入り娘の王族アムティアを始め、幼いリフィナはまだの筈だ。


 エアルウェンはどうなのだろう?

 彼女から冒険者だったって話は聞いたことはないけど……。

 エルフ族で魔法士ってだけでも異例だけにな。


「もう、パパったら意地悪ぅ! 明らかにグレン君に対する嫌がらせじゃない! 1000億Gくらい、パパのへそくりで出しちゃいなよぉ!」


「いや、クラリスよ。余に1000億Gもへそくりはないぞ。それはそれで大問題になるではないか……てか、皆の前でパパと呼ぶのはやめろ!」


 基本、王妃に頭が上がらないロイス国王。

 要は俺達で魔王を斃し、その報酬金で半分は返済しろってことか。

 んで残りの500億Gは自力で稼げと……やっぱ鬼か!


 それはそうと、俺への嫌がらせって何?

 国王に何かした覚えないぞ。


「……やるしかありませんか、師匠?」


 アムティアは不安そうに小声で訊いている。

 俺だってイクトの件で責任は取るつもりだったからな……。

 ジタバタ難癖つけても仕方ないだろう。


「だな。まぁ魔竜を50匹斃せばいいだけの話だ」


 魔竜とは竜人族と敵対する派閥の竜達で、魔王軍と協力関係にあることが多い。

 そいつら1匹につき、10億Gの報酬金が貰えるので狙い目だ。


 やる気になった俺の姿勢に、クラリス王妃は「まぁ、流石は推しのグレン君よ!」と応援し、横にいるロイス国王は「チッ」と舌打ちする。


「それではこれにて閉廷とする。パーティ達よ、今日から其方らは『竜撃パーティ』と名乗るが良い。それと余の娘、アムティアに免じて国内での装備や道具など無料で提供する……余もヘソクリでな。感謝しろ、グレンこの野郎……」


 何故か最後の方だけ小声で俺に言ってくる、ロイス国王。

 クソォ、施しなど受けたくないが今は受けるしかない。


「それじゃグレン君、またね~。アムティアも冒険と恋に頑張るのよぉ! ママいつでも応援しているからね~ん!」


「は、母上! おやめください! し、師匠の前ですぞ!」


 クラリス王妃の発言に対し、アムティアは顔中を真っ赤にして慌てている。

 まったく緊張感のない親子だぜ。


 こうして勇者パーティ改め、竜撃パーティは魔王討伐に赴くことになった。



―――――――――――


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