第24話 テッテレ~の呪術具



 俺が沈黙していると、シジンが前にでてきた。


「ロイス陛下、私に一つ考えがありますねぇ、ハイ」


「なんだ、シジン卿。申してみよ」


「はい。陛下も知っての通り、グレンさんに施された呪術|呪われし苦痛《カース・ペイン》の呪解は、私やレシュカ教皇をもっても不可能です。おそらく《恩寵能力ギフトスキル》級の強制力、ぶっちゃけ女神マイファの力でないと不可能でしょう」


「女神マイファと言葉を交わせるのは教皇のみだ。であればレシュカに頼んでみろと申すのか?」


「シジン様、それは難しいことです。私はただ女神マイファに問いお告げを聞くだけ……基本、神は中立公平であり特別個人に施しを受けることはございません……勇者ですら神界で《恩寵能力ギフトスキル》を与え、後は当人に一任するのみですから」


 レシュカ教皇でも女神マイファの力を直接借りるのは無理だと言っている。

 だがシジンは首を横に振るう。


「いいえ、私が期待しているところは、その勇者です……他の五大陸の。ひょっとして彼らの中に呪解可能な《恩寵能力ギフトスキル》を与えられた者がいるかもしれません」


「なるほどな……前魔王の件もあり、その力を授かっている者がいても可笑しくないか。レシュカよ、女神マイファに聞くことは可能か?」


「本来、他大陸の内情もあるため、秘密主義な部分もあるかと思いますが……私の責務として行ってみましょう」


 上手く該当する勇者がいれば、俺の《呪われし苦痛カース・ペイン》が呪解されるかもしれない。

 それはそれで有難い話だ。


「それともう一つ……」


 シジンはゆったりとした袖口から、銀色の輝く腕輪を出してきた。

 中央に深紅の魔法石が埋め込まれた鮮やかな装飾品だ。


 だが気のせいか?

 なんか禍々しくドス黒い魔力が漲っているんですけど……。


「シジン卿よ、それはなんだ? 余の目でも見定められるほど、負の魔力で満ち溢れているぞ」


「はい、呪術具です。長年の研究の末に完成した逸品ですねぇ、ハイ。装着するだけで肉体の感覚を奪ってしまう強力な呪術が施されています。これをグレンさんが身につければ《呪われし苦痛カース・ペイン》の効果が薄れるでしょう」


「シジン様、つまりは呪い同士をぶつけることで、グレンくんの激痛を緩和させることができるのですね?」


 部下であるエアルウェンが興味深々に訊いている。

 姉さん、もしや他人事だと思ってないか?

 魔法士って職柄は、探求心が豊富なあまりマッドサイエンティストが多いので有名だ。


「ええ。その通りです、ハイ」


「おい、シジン! そんな呪術具なんて装備してられるか! 感覚が奪われるということは、視覚や聴覚とか五感にも影響するってことだろ? んなの日常生活すらままならないぞ!」


「グレンさん、五感は問題ありません。影響するのは触覚と痛覚と温度覚と冷覚に限られます。また脱着は可能なので不要の際は取り外してください」


「そうか、それくらいなら困らないか……わかった。それをくれ」


 俺はぶっきら棒な物言いで要求する。

 今じゃ魔法学連協会の本部長という高地位で立場が逆転してしまっているが、まだ俺の肉体を狙っている不届き者なので、どうしても横暴な態度になってしまう。

 少し優しくすると、すぐ寝屋に誘われるからな。

 

「しかしです」


「なんだよ、もったいぶって?」


「魔王の呪いは絶大です……《呪われし苦痛カース・ペイン》の効果が緩和できる時間は一度の戦闘に3分程度と考えた方が良いでしょう。したがって力の乱用は厳禁ですよ、ハイ」


「……そうか。まぁ逆に3分間動ければ長期戦でない限りなんとかなるだろう」


 勇者の《恩寵能力ギフトスキル》みたいな縛りだと思うしかない。

 それこそ神様に与えられたチート能力じゃなく、自分で努力して身に着けた実力だというのに……仕方ない。


 けど、これで少しは戦えることができるようになった。

 あとは5人の勇者で呪解ができる《恩寵能力ギフトスキル》を持つ者がいれば万々歳だ。


「うむ、これで目途が立ったな。あと仲間の補充は認めよう。ただし、其方らで探すのだぞ」


「わかりました、陛下」


「そうするしかないみたいね」


「……寧ろ解散されなくて良かった」


 アムティア、エアルウェン、リフィナがやる気を見せている。

 勇者不在で困難な冒険になるが、俺も本気で頑張らないといけないな。


 などと思っていたら、不意に国王はとんでもないことを言い出す。


「あと――1000億Gの借金もよろしくな」


「「「「はぁ?」」」」



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