第19話 竜式戦闘術じゃ!
「まずは王様ッ、お前から消えちゃぇぇぇ、ハハハハハハッ!」
いきなりラスボスみたいになった、元勇者イクト。
放出した魔力から魔法陣を形成され、巨大な
その凶槍の矛先が、ロイス国王に向けられてしまう。
「父上ッ! やめろ、イクト!」
「陛下お逃げください!」
「貴様ァ、重罪ではすまんぞ!」
アムティアを始めとする王宮騎士や重鎮らが、イクトに制止を呼びかける。
「うるさい! どいつもこいつも主人公である僕に否定ばっかしやがってぇ!! 何故、認めてくれない!? 何故、ガバガバのラノベみたいにチヤホヤ持ち上げてくれないんだぁ!? 僕はこんなに頑張って戦っていたのに、誰一人として褒めてくれなかったじゃないか!!!?」
いや、イクトよ。
みんなお前の強さは認めていたぞ。
けど決まって「僕、何かやっちゃいました~?」とか「この程度で大げさだな~」などイキって見せるから、みんな呆れて何も言えなかっただけじゃないか……。
あと、いちいち甚大な被害を出しすぎて活躍との採算が取れなかったこともあるぞ。
んで結局、俺達パーティがお前のやらかしたケツを拭くのでてんやわんやだった。
それだけだ。
などとツッコんでいる場合じゃない。
俺は呼吸を整え、特殊な呼吸法に切り替える。
体内から「竜気」を練り上げているのだ。
竜気とは大地に流れる地気であり、大地から発せされる魔力の源である。
特殊な呼吸法により魔力を吸い込み、体内で竜気として変換させ循環し練り上げて使用する技法だ。
さらに竜人族が伝統とする体術を極め、あらゆる武器を使いこなし、独特の「型」に沿った戦闘技を駆使する。
それらの技術を総称して――【竜式戦闘術】と呼ぶ。
尚、【竜式戦闘術】を極めている者は、世界中においても9名の竜戦士のみであり人族では俺だけだ。
コオォォォォォォォ――……!
特殊な呼吸法により、体内で練り上げた竜気を全身に巡らせる。
身体能力を大幅に強化させた。
ガッ
俺は石畳の床を蹴り上げた。
その瞬発力はジェット噴射の如く爆速化し、一瞬でイクトの背後に迫る。
「いい加減にしろ、イクト!」
「グ、グレン兄ぃ!? い、いつの間に――」
「
振り上げた右拳に竜気を乗せ、イクトの顔面に叩き込む。
物理的破壊力は勿論だが、同時に「
「ぐぼぉぉぉぉ!!!」
イクトの顔面はぐしゃりと歪み、そのままブッ飛び天井に激しく叩きつけられた。
引力の法則に従い、大の字に落下すると石畳の床から亀裂が走る。
そしてロイド国王に向けられた巨大な魔法
イクトは鼻骨が粉砕され頬を大きく晴らしたまま気を失っている。
また放たれた「
「……少しやりすぎたか。しかし――うぐぉおおおお!」
突如、体中に激しい痛みが走る。
顔中から指のつま先に至るまで、ドス黒い血管が浮き出て俺の身体を蝕む。
これが《
真の力を解放したことで約1分間は地獄の苦しみを味わなければならない。
激痛のあまりに身悶え、その場に蹲ってしまった。
「師匠ッ!」
「グレンくん!」
「……グレン、大丈夫!?」
アムティア、エアルウェン、リフィナの三人が駆けつけて安否を気遣ってくれる。
特にリフィナは回復魔法で痛みの緩和を図ろうとするも効果は得られない。
それだけ前魔王の呪いは強力で凄まじいということだ。
「……ぐふっ。みんな……どうしてグレン兄ぃ、ばっかり……主人公は僕なんだよ……み、みんな僕の力を……賞賛してくれよぉ」
イクトの野郎、もう意識を取り戻したのか?
流石、女神の《
タフさも上級魔族並みかもしれない。
だが俺が放った
戦場であれば今のうちにトドメを刺すべきだが――。
―――――――――――
お読み頂きありがとうございます!
「面白い!」「続きが気になる!」と言う方は、★★★とフォローで応援してくれると嬉しいです!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます