第12話 何やらかしとんねん!
イクトside
そうこうしてパーティには内緒で、娼婦館で遊び尽くし宿屋に戻ってきた直後。
突如、グレン兄ぃに胸ぐらを掴まれてしまう。
「イクト! お前、何やってんだ!? 自分が何をやわかしたのかわかっているのか!?」
「僕ぅ、また何かやっちゃいましたぁ?」
「んだと、テメェ!」
グレン兄ぃの掴む手に力が入る。
相変わらずのバカ力だな……このおっさん、何ムキになってんの?
うぜぇ、どうせ後で戻るんだからいいしょ。
「師匠、どうか落ち着いてください……勇者殿、貴方がやらかした民家及び家財の破壊と強奪した金銭など、フォルセア王国が全て弁償いたしました。怪我を負わせた住人と衛兵らの治療費も含めて……とりあえず今後は単独での外出を控えて頂きたい」
アムティアが表情を強張らせながら説明する中、グレン兄ぃが舌打ちして僕から手を離した。
「まだ死人が出なかっただけマシだ! お前、前回も魔物との戦いでオーバーキルして森や周辺の村を破壊しているんだからな! 力のセーブ云々じゃない! 常識どころかモラルすらなってないぞ! やっている事は魔王軍より質が悪いんだからな!」
「……わかったよ、グレン兄ぃ。もう小遣い稼ぎはしないよ。外出の件も今後はみんなの言うことを聞くからね」
本当は少しも悪いとは思っていないけどね。
現に謝ってねーし(笑)。
けど今は理不尽に叱責されることでヘイトを溜めつつ、後で大逆転劇が待っているんだ。
それまで甘んじて罵倒され続けますよ~。
「……イクト、頼むぞマジで。一線超えたら、もう誰もお前を庇えなくなるんだからな……クソォ、涙が止まらねぇ。元『導き手』として自信無くしてきたわ……」
グレン兄ぃは、ぐすぐすと鼻を鳴らして目から涙が溢れ出ている。
いいおっさんが情けねーな。
僕と同じ地球から来たんだから異世界ライフを楽しもうよ。
「師匠……貴方は大変よく頑張っております。寧ろ不甲斐ないのはこの私です。少し落ち着きましょう」
アムティアがそんな豆腐メンタルのグレン兄ぃを慰めている。
僕の婚約者なのに、またNTRが始まったぞ。
そんな中、隅っこではエアルウェンとリフィナが背を向けて沈黙していた。
なんでも僕が前回焼き払ってしまった森はエルフ族の集落があり、エアルウェンの故郷だったとか。
そのことに怒ってしまい、今じゃ目すら合わせてくれない。
リフィナに至ってはもっと最悪だ。
近づくだけで睨まれ、酷い時には地面に唾を吐かれてしまう始末。
とても年端のいかない10歳が見せる態度じゃない。
みんな頭固いなぁ、モヤモヤしずぎ。
終始イライラしたって良いことないしょ?
ラノベだって頭からっぽにして、ノンストレスで読むのがいいんだぞ。
要は魔王を斃せばいいわけだし、勝てば官軍って言うじゃん。
そうなれば僕はアムティアと結婚し、エアルウェンとリフィナも見直して絆してくれる筈だ。
けど確かに、今はストレス展開ばっかだな。
グレン兄ぃは僕からマウント取ろうと必死でイキってばっかだし……。
もういっそ、全肯定してくれる奴隷の子でも買っちゃっかな……。
あっ、金ねーや。
◇◆◇
旅を続けてから、もうじき一年が経とうとした時だ。
とある商業国にて、魔王軍が攻め込んできた。
敵将は「岩鉄のムーヴァ」と名乗っており、筋肉隆々の巨躯を誇る幹部クラスの魔族だ。
よし、初幹部との戦闘だ!
当然、僕が先陣を切りムーヴァと対峙する。
「――僕は勇者イクトだ! くらえ《
「なんだ貴様、いきなり――ウギャァァァァァ……!!!」
超巨大な魔力粒子エネルギーを浴びせられ、岩鉄のムーヴァは一瞬で塵と化した。
けど油断してはいけない。
案外、実は生きてましたってパターンがあるからな。
それから何度も上級攻撃魔法を放ち、魔王軍の残党ごと殲滅してやる。
威力が強力すぎるため、多くの建物を破壊してしまい住人達も悲鳴を上げながら吹き飛んでしまっていけど、まぁいいや。
どうせ後々都合よく復活する連中だろう。
それよりパーティのみんなに僕の力をアピールするんだ。
僕はこんなに凄いんだぞ的な感じで。
さぁ、みんな「す、すごい……」と褒めておくれ。
ん、おや?
何やらアムティア達が必死の形相で叫んでいるぞ。
けどイキリMAXである僕の耳に、みんなの声が届くことはなかった。
―――――――――――
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