第4話 キモすぎる勇者
イクトside
「――其方が召喚された勇者だな?」
異世界に来た僕は、神官達に連れられて王城へと案内された。
広々とした『謁見の間』の中央に、豪華な玉座でふんぞり返る王様がいる。
名は、ロイド国王だとか。
真っ白い長い髭を蓄えた初老っぽい雰囲気といい、姿形から如何にもテンプレっぽい王様だ。
「うん、イクト・スズキだ。イクトって呼んでよ」
僕は突っ立ったまま自己紹介すると、周囲のモブ達が異様にどよめいている。
どうやら、もう主人公補正が働いてしまったか……。
皆、僕のステータスを見て驚愕しているのだろう。
「……何故、勇者殿は跪かないのだ? 陛下の御前であるというのに」
「しかもタメ口って……いくら礼節を知らずとも、目上に対する良識がないのではないか?」
「いや作法がない世界から来たからかもしれん。誰か教えてやれば良いのでは?」
「それは違うぞ――15年前の勇者は、もっとちゃんとしていたからな。少なくてもタメ口ではなかった」
モブの貴族や兵士共がうっせーっ。
NPCなんだから黙ってろよな……ああ、こいつら似たようなことしか言わない連中だからしゃーないか。
ロイド国王が片腕を挙げると、どよめきは一斉に治まった。
「今はよい。勇者への教育は『導き手』が行うものだ」
「導き手ってなぁに? アイテムとか何か?」
「違う。其方のような異界の勇者を正しき方向へと導き補助する者だ。本来なら伝承に則り、其方と同郷の記憶を持つ『転生者』に委ねる役目なのだが、何分、不測の事態……適正者が見つからなかった」
「はぁ(何言ってんの、この髭チャビン……そうか、僕のナビゲーターみたいなポジか?)」
「したがって余が信頼する者に『導き手』を委ねた。入ってまいれ――」
王様が手を叩くと、奥側の扉が開かれる。
カッカツと靴底の音を鳴らし、一人の女剣士が入ってきた。
しかも黄金色の長い髪を靡かせた、ヤバイくらいの美少女。
真っ白な艶肌に切れ長の青い瞳。
体に密着した鎧を纏っているが、浮き彫りになっている曲線から豊満な胸と引き締まったウエストから、抜群のスタイルの良さが伺える。
僕と同じ年風だが、明らかに日本人離れした幻想的な美少女剣士だ。
「その者は、アムティア。余の娘であり、15歳でありながら王宮騎士以上の実力を持つ」
「勇者殿、アムティアと申します。以後、お見知りおきを」
自己紹介しながら彼女は僕の前で丁寧に頭を下げて見せる。
うおっ、王様の娘だって!? 全く似てねぇ!
しかも15歳って僕より年下じゃないか!?
いやそれよりも、めちゃ可愛くね!?
少し目尻が吊り上がった感じがツボなんですけど!
王様の娘ってことは姫騎士って感じか?
如何にもオークに囚われて「くっ殺せ」とか言いそうじゃね!?
このアムティアって子が、勇者である僕をナビしてくれるのか……。
しかも従順に常に傍にいてくれて、無償に尽くしてあんな展開やこんな展開まで……。
うん! いい!
これぞ異世界転生モノ!
なんかやる気出てきたわ~!
「僕、イクト、よろしくね! それと王様ぁ、魔王を斃したご褒美なんだけど」
「何? もうその話か? いや、その前に其方に伝えるべきことが色々と……」
「そんなのAボタン押してスキップだわ! それより僕から要望していい?」
「要望か……まぁ言うだけならいいだろう。申してみよ」
王様に許可を貰い、僕はチラッとアムティアに視線を向ける。
うん、もうこれしかないでしょ!
「――アムティアと結婚させてください!」
「「はぁ!?」」
僕のナイスな提案に、アムティアと王様は大口を開けて唖然とする。
これもラノベでよくあるリアクション(笑)
「あの勇者はいったい何を申しているのだ? 出会ったばかりで結婚とはどういう了見だ?」
「そもそも、いきなり姫を呼び捨てとは……なんて無礼な男だ!」
「絶対やべーよ、あいつ」
周囲のモブ共がなんかうっせーっ。
NPCが決められたこと以外喋んなっての。
王様は口髭を擦りながら、しばらく考え込んでいる。
すると、
「……うむ、まぁいいだろう。魔王を斃した英雄となればその資格もある」
「父上! いえ陛下! そんな勝手は困ります!」
おっし! 王様からの許可を貰ったぞ!
アムティアは思いっきり拒んでいるけど、まぁいいや。
どうせヒロインは何もしなくても、後で主人公に絆されるオチだからね。
我ながら幸先の良いスタートだわ~。
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