第3話 イキリ勇者召喚


イクトside



『――鈴木郁斗いえ、勇者イクト。これから貴方は私が創造した世界へと召喚されます』


 煌々とした真っ白な光に体が包まれている中、僕の目の前に美しい女性が語りかけてくる。


 落ち着きのある口調で清楚感のある綺麗なお姉さん。

 透けた法衣服を纏い、背中には真っ白な翼を広げている。

さらに全身から黄金色の輝きを放っていた。

 まるで天使、いや女神のようだ。


「お姉さんは誰? 僕はどうしたの?」


『覚えていないのも無理はありません……私はマイファ。天地創造を司り世界の調和を守るため、異界から勇者を導く女神。イクト、貴方は死んでしまったのです。暴走する車に轢かれてしまって……ですがご安心ください。貴方の肉体は私が元の状態に蘇生させました』


「死んだって、僕が? けど蘇生してくれたということは、元の世界に戻ることもできるってことだよね?」


『それはできません。元の世界ではイクトは死亡した扱いとなっております。貴方は勇者として魔王を討つことが使命です。それを果たした後は、私の世界で自由に過ごして良いとお約束いたしましょう』


「なるほど……これは異世界転生モノだね? あるいは転移モノ? けど死んだんだから転生?」


『……思いの外、冷静に受け止められていることは結構ですが、これまで導いてきた勇者達にも伝えていますけど、物語やゲームとやらの世界ではありませんよ。確かに似たような世界観ではありますが、れっきとした現実世界です。誤った認識は控えるべきだと忠告しておきます』


「わかってるぅ、わかってるぅ。んで、次に僕にチートスキルを授けてくれるんだろ?」


『……はい。私は《恩寵能力ギフトスキル》と呼んでいます』


「ほらな。やっぱテンプレじゃん。んで、どんなスキル? それとも自分で選ぶとかっていうアレ? まさか『駄女神よ、お前も来い』って要求すれば、女神さんも一緒に来ちゃう系? けど、女神さん『駄』はつかなそうだね?」


『……イクトの適正に合わせた《恩寵能力ギフトスキル》を私が授ける形です。尚、一度授けたスキルは命が尽きるまで貴方の固有能力となります』


「オッケー。んでどんな能力?」


『――《無尽蔵超魔力インイグゾースティブル》。どれだけ魔法を使用しようと魔力切れを起こさないスキルです。しかも魔力を蓄積させることで、より強力な威力を発揮いたします』


「わぉっ、猛烈ゥ! うん、いいんじゃね? 初っ端から俺tueeeじゃん! 速攻、魔王を斃して、美少女キャラとスローライフだわぁ!」


『今回は特別に強力なスキルを授けています。何しろ緊急事態ですからね』


「どういうこと?」


『私の創生した世界では一世紀(100年)に一度、魔王たる者を誕生させています。それは世界の調和と均衡を保つための処置としてです。しかし今回は、たった15年で魔王が出現してしまった……女神である私の意に反する形で。だからイクト、貴方には魔王を斃すだけでなく、それらの真相を究明して頂きたいのです』


「へ~え、レアイベントってやつかな? 管理者GMである女神さんの粋な計らいだねん。面白くなってきたわ」


『……さっきも述べた通り、私の意志ではありません。心当たりはなくもないですが、現時点で余計な情報は控えるべきでしょう』


「いいよ、そういう設定で。んで、僕のステータスとかどうやって見れるの? 厨二っぽく叫んじゃう的な?」


『……そのような仕様はありません。いいですか? もう一度言いますが、貴方が召喚される世界は現実の世界です。死んでしまったら生き返りませんし、住人達は秩序を守りそれぞれ生活しています。決して無暗に侵してはいけません。いいですね、イクト?』


「――ステータスはギルドに行けば観れるのかな? 魔力測定器とかに触れて壊したら、受付嬢のお姉さんに『凄い~』ってなるんだろうな……一度、やってみたかったんだよなぁ」


『……聞いてますか?』


「ん? ああ、大丈夫だよ女神さん。必ず魔王を斃すから安心してねん」


『わかりました。信じましょう……では間もなく、私が守護するフォルセア王国の大聖堂より「勇者召喚の儀式」が実行されます。後のことは頼みましたよ、イクト――』


 こうして僕、勇者イクトは異世界に召喚されたってわけさ。



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