第12話 ダンジョン配信者デビューを決意する元英雄




「一日経っても追手が来る気配はないな。振り切れたと思ってもいいかもしれない」


「そうであれば、報復に向けて動いた方がいいだろうな。まずは奴の外堀を崩すところ始めた方がいいな」


「外堀ってことは松本大臣の評判てことだよな」


「そうだ。奴を担ぐものたちが手を引くほどの悪評を広めて守りを剥がす必要がある。そうすれば寄るべのない奴への報復の難易度も下がるし、報復後の我々へのカウンターを排除できるからな。……地上で一番情報発信力のあるメディアは何だ?」


「配信だな」


「配信。この前、マイギリが訳知り顔で語っていたあれか。具体的にはどう言うもの何だ?」


「ドローンって言う道具を使ってリアルタイムでこの場の光景を地上中の人間と共有するものだ」


「地上中の人間か。確かにそれならば情報発信に使うメディアとして申し分ない。使わない手はないな。だがそれだけの力を持つものだ。何か代償やデメリットはあるのだろう?」


「ああ、同じように発信できる人間が星の数のようにいるからな。地上中に発信できると言っても、多くのものの中で俺たちの配信を受け取るかどうかは見るもの次第だ。周りのものより魅力がないと判断されれば、簡単に埋もれてしまう」


「ほう、見られるように工夫する必要があると言うことか。魅力があると言うことは人々の関心に応えることだが、地上の人間たちの配信においての関心ごとはなんだ?」


「ダンジョン配信--罠が張り巡らされたダンジョンに潜ってモンスターと戦いながら最下層まで目指す刺激の強い探検ものの配信だな。この配信で一番の見どころはモンスターと戦うところで、配信者が強いほど見ている人間は熱狂する。俺たちは配信者の中でもトップ層の実力を持つから、配信をすれば他の配信者よりは見られやすくはあるだろう」


「ふむ」


 そこまで配信のことについて説明するとホムラは思案げな顔をした。


「だが人気が出て広まるのはいいが、ダンジョン配信者では評判を落とすには無理があるんじゃないか? ダンジョンのエキスパートが国の政を行っている松本のことを語っても、畑違いで説得力はあるまい」


「そのことなら大丈夫だ。ある程度の実力を持ったダンジョン配信者なら批判できるような無法を松本は行っているからな」


 奴が輝利哉を英雄として仕立て上げたことだ。

 実力を周りから認められるダンジョン配信者が自分が英雄だと言えば、実力の伴っていない輝利哉は英雄であるに足る実力を見せられずに自滅する他にない。

 それだけでも松本が祭り上げた息子の不祥事ということで松本の評判は地に落ちるが、12年前に輝利哉の側で英雄のフリをしていたと認識されている俺──真実を知っていただろう人間が死亡したと言うことも発覚すれば口止めとして権力を使い人1人消したと言う悪評も立つことになる。

 ここまでになればこのゴシップだけでも松本は失脚する。


「俺たちがダンジョン配信者として実力を世間に認められれば、奴の評判を地に落とすことは可能だ」


──ー


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