第11話 自分で自分の首を絞める大臣


「おのれ! 魔人ではなく唯のコスプレ娘ではないか! 一体私がどれだけの出費とリスクを犯したと思っているのだ! 出来損ないが!」


「ごほ! おぼ!」


 松本邸の地下にある『反省部屋』から割れんばかりの怒号とくぐもった嗚咽が聞こえる。

 松本大臣が八つ当たる声と、暴力によって自然と輝利哉の口から漏れる音だ。


「ハア。 ハア。 全く私に恥をかかせおって。自衛隊をコスプレ娘のために派遣したなどとなればとんだ笑い者だ。貴様など12年前にモンスターに食い殺されればよかったものを」


 しばらくして松本は息が上がると、拳を止める。


「お前は1週間、暗闇の中にいろ不良品が」


 苛立ち紛れに輝利哉に処分を告げると松本のスマホがなり、手に取る。


『松本さん、お困りですかな?』


「なんのようだ山崎?」


 唐突に『メサイヤ』の社長である山崎からそう尋ねられ、松本は不機嫌さを隠さずに尋ね返す。


「政府にいる友人から少し話を聞きましてね。松本さんが魔人を駆除するために自衛隊最強の部隊を連れ出したと。もし護衛が必要であれば、こちらで用立てしようと思いまして」


「護衛だと! 護衛など必要などないわ! 碌な情報収集能力のない貴様の力もな!」


 古い情報を持ち出して営業をかけてくる山崎が煽りにしか思えず、松本は強い言葉を使って断る。


「ほほう。私の力が必要ではないと、私どもは復興のおりにも力添えして大きな利益を齎したはずですが」


「貴様らが役に立ったのはそこまでだ無能が! もはや貴様らの力を頼らなく久しい! 貴様らと金輪際、手を組むことはない! 失せろ!」


 そのまま怒りのままに縁切りの言葉を言うと、通話を切る。


「私を害せずものなどこの世に存在せんわ! 下劣な下級国民は想像力もないのか、まったく!」


 松本は自分が狙われているとは夢にも思わず、驕り高ぶりながら不平をぶちまける。

 その態度が自分の首を絞めていることに気づかず。


ーーー


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