第10話 報復の仲間を手に入れる元英雄


「ホムラ」


「どうした、お兄ちゃん」


 ホムラに話しかけるとお兄ちゃんという呼びかけをされてギョッとする。

 ホムラがお兄ちゃんというと殺戮の王を思い出してしまう。

 おそらく言い方に含みのある感じではないし、特に当てつけのような意味合いはないと思うが。


「追っ手を巻いた後のことについて確認したくてな」


「ああ、確かに。追っ手を巻いた先のことについてはお互い何も情報を共有してなかったな」


「お前は今回のことで追っ手を巻いた後はどうするんだ?」


「そうだな。ここで隠居でもしようかと思っている」


「隠居か。ホムラは動いてる方が生き生きしてるように見えたから少し残念だな」


「仕方あるまい。集団の決定に個で逆らったのだからな。人の心を掴めなかった異端児の行き着く先は断頭台か、人知れぬ場所と決まっている。そう言うレンは終わった後はどうするのだ?」


 俺のやるべきことは決まっている。

 唯一の家族である妹に危害を加えた松本大臣を報復することだ。


「俺は刺客を放ってきた松本という男に報復する」


「報復に松本か、お前も魔人族と同じことを言うのだな」


「他の魔人が松本に報復すると言っていたのか?」


「ああ、松本は私たちに地上の恩恵を約束を代わりに、魔力領域を広げさせた結果、兄を含めた魔人が正気を失ったからな。具体的なことは何もわかっていないが松本を含む、『メサイヤ』という男たちを報復しなければいけないというのが今の魔人たちの総意だ」


 松本が魔人やモンスターたちが地上にも関わっていた。

 とんでもない事実だ。

 世界人々を地獄に陥れた張本人があの男とは。

 俺の両親の死にも絡んでいたことになる。

 松本は俺の家族全ての仇だったのだ。

 松本について報復には拷問して命を奪うことは確定していたが、両親の分も入れて社会的地位も地に落とすことにしよう。


「評判を地に落とした後に何度も死ぬギリギリまで拷問してから消えてもらうか」


「うん? 何か言ったか?」


「いや、なんでもない。ていうことかはその魔人たちに追われる身になっているということはホムラは報復に反対したということだろう。理由は十分なのになぜなんだ?」


「松本や『メサイヤ』がやったという証拠があるわけではない上、奴らがやったという魔人の正気を失わせる技のカラクリも解けていないからな。現実的に考えて報復を行なったとしても成功する見込みがない。というよりも全員正気を失わされて全滅する公算の方が大きい。逆に聞くがレンお前が報復する理由はなんだ?」


「俺が報復する理由か。妹を傷つけられて、俺の感情がそうしろと言い、実際それが可能だったからだ」


「単純明快だな」


「報復に関して理屈を捏ねてもしょうがないからな。いくら作り出しても最終的には憎しみに帰結するだけだ。自分の醜い感情を認められないなら自己防衛のためにすればいいと思うが」


「そうか」


 ホムラは瞳を閉じた。

 そして数瞬置いて、瞳を開けると言葉を紡いだ。


「隠居はやめて、私もレンの道行についていくことにするか。最初から他の魔人を巻き込まなければそれでよかったのだ。しがらみなど考えず、自分のしたいことを成すことにするよ」


 彼女の決断したことはその言葉でうかがえた。

 その範囲にどこまで含まれるかわからないが、助力があるならばある方がいい。

 進んだ先で彼女の報復にどこまで含まれるか、確かめればいいだけなのだから。




ーーー


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