第2話 全ての諸悪の元凶
「おのれ、今更魔人など! 戦いを避けるということは。正気を取り戻した殺戮の王の一派だとでも言うのか!?」
松本大臣は自分の息子である松本輝利哉の配信に映っていた非戦の魔人によって、焦燥に駆られていた。
12年前に松本が秘密裏に遂行した『ダンジョン生物による防衛圏構築計画』の協力者である殺戮の王の一派であった場合、ダンジョンから世界にモンスターを氾濫させたことに自分が関与していたことがバレる危険性があるからだ。
「友好的だから利用してやったというのに、魔力を励起させてやった途端に正気を失い、暴走しおった挙句にまだ私の足を引っ張るのかゴミどもめ!」
12年前、友好的な態度を示す魔人達──殺戮の王の一派と大企業『メサイヤ』がコンタクトを取り、当時『メサイヤ』と繋がりのあった松本はその情報をもとに魔人達が未開人よろしく無知蒙昧で警戒心のかけらもないことを知り、死んでも国民から一切咎を受けることのない魔人を有事の際に兵士として使う環境を整えることを画策。
松本から依頼を受けた『メサイヤ』は魔人自身から魔人が膨大な魔力を糧にすることで地上にも足を運ぶ術を持っていることを聞き出し、わずか数日のうちに魔人への大量の魔力供給方法を確立した。
だがそのまま破竹の勢いで計画が実現段階まで進むかと松本が夢想した最中、第一回の『メサイヤ』による魔力供給実験は失敗。
大量の魔力を供給された魔人たちは地上に足を運ぶ術──魔力領域の拡大を行った直後、正気を失いモンスターたちと共に地上に出て、暴虐の限りを尽くすだけには止まらず、世界中に魔力領域を拡大した。
世界的な混乱状態にあった上に、被害が最も重かった日本は原因究明できるほどの余裕を持っていなかったために、凶悪な魔人が地上の人間を侵略するために暴威を振るったということで片付けられたことで松本は難を逃れたが、次期首相として確実と言われる今現在になってまた忌まわしい十二年前の過去が迫り来ていた。
これでは政財界での躍進と人類を絶滅の危機に陥れた諸悪の元凶とは真逆のイメージである救世の為政者というイメージを植え付けるために行った工作──『メサイヤ』が行った日本復興事業に自分が一枚噛めるようにしたり、息子である輝利哉を世界を救った英雄に祀った工作が全てが水の泡になる。
「それに何より魔人により十二年前の事実が明るみに出れば、世間が、力だけは一端の下級国民──安藤蓮が私を仇と見做す! 政治家生命どころか、私自身の命が危うい!」
失脚するだけでは済まず、松本の中で絶対的な価値を持つ自身の命まで失われてしまう。
それだけは絶対に避けなければならない。
想定した最悪を回避するために松本は政争で磨き上げ続けられた脳みそを使い、自分の命を奪う可能性がある要因を炙り出す。
「魔人は処分するのは当たり前のことだが、安藤……奴が魔人と組んで魔力が使える状態で地上に現れれば、自衛隊であれども誰ども奴を止めることができない。奴を早急に処分する必要がある」
幸いなことに魔力領域であるダンジョン以外は安藤はただの人だ。
安藤が臨戦態勢をとっていなければチンピラでも十分に亡き者にできる上、自分との繋がりもあった証拠の隠滅も家を燃やせば容易だ。
「私だ。そちらのものを貸してくれないか。消したい男がいる」
いつも厄介ごとの時に使っているスジモノに連絡を入れ、オーダーを終えると、一息つき、松本は残りの頭の痛い問題──魔人を駆除する算段を立て始めた。
──ー
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