第九話 静かな先輩

「来たか。悪いな急に呼び出して」


「いえ。それで、何の用でしょうか?」


俺はある日、下校中に電話で班長に呼ばれた。今回は本部ではなく、学校の近くにある支部に来た。支部のほうは一見中華料理屋だが、どうやら店長がフレームの関係者らしくて、話したらあっさりと中に入れてくれた。


「実は、次の任務をお願いしようと思ってな」


そう言いながら班長は一枚の紙を取り出した。その紙には何人かの顔写真と、その人の名前などの情報が書かれてた。ざっと四人ほどだろうか。


「このへんで行方不明者が多くてな。これが行方不明者のリストだ」


「あの、この行方不明者って魔王たち関係あるんでしょうか?」


あくまでフレームは魔王が最終目標。こんな警察みたいなことはしないはずなんだが…


「やっぱそう思うか。俺も最初はそう思ったんだが、実はこれ、全部十年以上前の行方不明者なんだ」


「え?」


「しかも四人もいなくなったのにマスコミは全く取り上げないし、警察も調査をしてる感じがない」


「絶対なんかありますね」


警察が動かない事件=裏で何か働いてる この世界でも同じだな。


「というわけで水谷にお願いしたいんだが…」


「だが?」


「水谷はまだ入隊したてだ。もう一人、一緒に行くことになった。おーい、こっちこーい」


班長は奥の方に声をかけた。すると、


「はーい」


返事が返ってきて、足音も聞こえてきた。


そしてすぐに姿は見えた。中学生ぐらいだろうか?明らか俺より年下の男子が出てきた。


「こいつはうちの班の藤村瞬。中学二年生だ」


「藤村瞬です。…お願いします…」


小さな声で藤村君は言った。


「水谷爽です…」


「藤村はお前より若いが、フレームとしての経験は長くて、小4くらいからやってるから、頼りにしろよ」


「え、すご」


「いえ、それほどでも…」


そう言いながら藤村君は班長の後ろに隠れてしまった。


「あ、あれ?」


「ああ、実は藤村、とてもシャイでな…」


「ああ…」


どういう感じに話したらいいんだろ?てか話しかけるのは正解なのか?でも、一緒に任務するにおいてある程度話せないとだしな…


「じゃ、あとは二人で頼んだよ」


そう言って班長は出て行った。


…いや気まずっ。俺前世で打倒魔王に集中してて人と関わってこなかったからコミュ力高くはないんよ。


「じゃあ、最初は情報集めしよか」


「…あ、いや…」


「ん?何かいい案ある?」


「あ…いや、なにも…」


あ、でた。アニメあるある。聞き直したら何でもないって言うやつ。けどな、これ正直に言っていいよとか言ったら少し高圧的な感じがするんだよな…


「藤村君って、インターネット出来る?」


「あ、はい。ある程度は…」


「じゃあ、ネット使って情報調べてくれない?」


「あ、はい…」


「あと、藤村君って能力何?」


すると、藤村君はポッケからメモ帳を取り出し、その中から一枚紙を取り出し渡してきた。



消音隠密サイレントハイド

音をなくす



こんなことが書いてある。


あー、されやすい質問はメモに書いといてしゃべらなくても何とかなるようにしてんだな。賢いな~


「じゃあ、俺は足で情報探してみるから。がんばってね」


そう言って俺は飛び出した。



・・・


「マージ―で気まずかった~!」


まぁ、藤村君的にも一人のほうがいだろうし。さて、俺も探偵の真似事でもしてみますか。








・・・


「ごめんなさい。水谷さん」

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