第四話 実技試験

訓練室についた。


別館のように建てられていることもあり、学校の体育館に似ている。

だが、一つだけ学校とは違うところがある。

壁や床、天井が傷だらけなところだ。切り痕や焦げた跡、原因のわからない大きなくぼみもある。一部は修復もされてるようだが、それが追い付かないのか、無傷のところを探すのが難しいまである。


「来たか。水谷爽君」


舞台上から誰かが言ってきた。見るとそこには、片手にパソコンを持って、眼鏡をかけた男がいた。


「私は今回の実技試験の試験官。相馬幻輔だ」


「あ、はい。よろしくお願いします」


「じゃあ、さっそく始めよう。ルールは君の君の経験から決めるんだが…君、能力二つあるようだね」


「まぁ、はい。一応…」


「そうか。ならこうしよう。私がまず百体の雑魚を出すからそれを倒してくれ。それができたら最後に一体、それなりの強さのやつを出すから、それを倒せたら合格だ」


なるほど…百人組手+αってわけか。難易度は多分高いほうだろうな。ま、関係ないか。


「わかりました」


「では、始めよう」


イリュージョングラフィック


相馬さんが能力を使うと、目の前に真っ黒な人が表れた。一人、二人、どんどんと増えていき、途中で数えるのもめんどくさくなった。体育館の半分は埋まる程度の人数だ。さっきの話的に百人いるんだろう。


俺は刀を鞘から抜いた。


「だらだらやるのも面倒だ。ここは即効終わらせる」


黒い人たちが一斉に襲い掛かってきた。多分、数の暴力で何とかするつもりだろう。


アルカディアフィールド


黒い人の攻撃が俺に当たる直前、俺は刀を振って自身を囲うように球体の斬撃の膜を作った。


ザシュザシュザシュ


俺が直前に技を出したので一気に技を食らった。防御面はそこまでなのだろうか、かすっただけで消滅していく。俺が技を解除した時には、後ろのほうにいたであろう奴しか残ってなかった。


「あと、47人ってところか…」


ふと腕を見ると、血が流れていた。

まだ、戦闘中常時発動させとくのには慣れてないからな…


キランリバイブ


俺は自身の怪我を直した。


「さ、終わらせるか」


ゲヘナブースト


俺は地面をおもいっきり一度だけ蹴った。


ザシュッ


この攻撃で相手は全員消滅した。


「さすが出したやつが雑魚っていうだけあるわ。さ、あとはボスだけだ」


「ほう、思ったよりやるようだな。じゃあ、最終戦だ!」


すると、目の前にまた黒い人が表れた。しかし、さっきとは違う。明らか大きい。

体育館の高さぎりぎりだろうか。


「なるほどな」


すると、奴は無言で腕を上げ…


ズドーン!


思いっきり振り下ろした。

俺はそれを交わした。さっきまで俺が立っていたところを見ると、クレーターと言われても違和感がない痕ができていた。もろに食らってたら痛いだろうな…でも、


「鈍い」


血陣


ザシュッ


奴は俺に背中を切られ、そのまま倒れた。

血陣は、血液暴走で出血した血を刀にまとわせ切れ味を上げる技だ。どんぐらい切れ味が良くなるか、詳しくはまだわからないが、この前練習で使った時にビニール傘で近所の街灯真っ二つにしたことがある。これだけで強力な技であることは明らかだ。ただ…


「ブハッ」


俺は血を吐いてしまった。この技、コスト高いんだよな。これでもキランリバイブで軽減している。ブラッドラグナロクよりは何倍もマシだがあれはキランリバイブ無意味なことを考えると、事実上俺の最大火力だ。


「やっぱこの技きついわ…」


奴は倒れたまんまそのまま消えかけている。百体いた奴らもそういえばこんな感じに消えてたな。


「やっぱり、どの世界でもでかい奴は基本噛ませ犬なのかもな」


俺がそういった時、奴は完全に消滅した。


「ほう、正直無理だと思ったが、こんなにも簡単に倒すとはな」


相馬さんが驚いたように言った。


「確かに能力も二つ使えるようだし、実力も問題ない。合格だ」


「はい。ありがとうございます」


俺は礼を言って、体育館を出た。


「あ、水谷さん。どうだった?」


出てすぐのところに、白星さんがいた。


「ああ、合格だ」


「え?本当?おめでとう!」


学校で会う白星さんからは想像できないくらい驚いてる。


「ありがとう。あ、そうだ。刀ありがとね」


俺はそう言って刀を白星さんに返した。


「はい。そういえば、試験官の人から明日こいとか言われませんでした?


「ん?いやなにも?」


「え?」


「え?」


これ、もしかしてなんかまずい?


ガラガラガラ…


すると、いきなり体育館の扉があいた。そして中から、先ほどの百人いた黒い人が一人出てきた。


血液暴…


「ちょ、ちょっとまって!」


俺が全力でこいつをぶん殴ろうとしたら、白星さんに止められた。


「多分、試験でこいつ相手だったんだろうけど今試験中じゃないから敵じゃないよ!」


「あ、そうか」


黒い人は、こっちに近づいた。そして、俺の目の前で止まり一枚の紙を差し出してきた。


「え?なにこれ?」


俺が紙を手に取った瞬間、黒い人は消滅した。

紙を見てみると、こんなことが書いてある。


入隊手続きのお知らせ


・・・


俺と白星さんは目を見合わせ、そして同時に言った。


『そんな大事なこと、最初から言えよ!』


のちに上からうるさかったと手紙が二人に送られたのは、また別の話である。

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