第39話 海の町

  いつまでも、この瞬間が続けばいいのに。


 加奈はふとそんな風に思った。加奈の住んでいるところは小さな漁港の町で、家から海が見えた。海の匂いと生臭い匂いと。自分の部屋から香るのは決していい香りと言うわけではなかったけれど、ここから見える夕日が好きだった。


 部屋には積まれた段ボールが4つ。明日、ここをでて大学へ行く。


 行きたかったところだし、行かせてくれる親にも感謝している。なのに、こんな気分になるとは思わなかった。


 夕日は沈むのが早い。そろそろお母さんの「ご飯よ」と言う声がするのだろう。ちゃんと心にしまっていこう。加奈はそう思った。

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